「照れてねーし!」
「あ、中身はそのまんまだ」
ははっと康輔が笑う。
「ほっとけっ」
そうこぼしてササッと自分の席に戻った。
「あ、次の授業なんだっけ?」
と、隣をむく。
あれ?
陽向がいない。
まぁー、まだ始まるまでに3分あるからな、いなくても不思議じゃないか。
「なー、次って何?」
たまたま通りかかった佐伯に聞く。
佐伯凌生も康輔と並ぶくらいゲームが好きで一緒にやることもしばしばあるゲーム仲間の1人。
あ、でもそーいえばコイツ、最近ゲームやってないとか言ってたっけ?
「えーっと、数学。
ってめっちゃ可愛くなったじゃん花園。」
「あー…サンキュ?」
なんか、可愛いって言われるのに若干慣れた…。
「なんで疑問形なんだよっ」
コツ、と頭を叩かれる。
「そーいや、教科書出るとこやった?」
「あ?」
なんだそりゃ。
「ははっ、やっぱ忘れてる。
まぁ、花園はそーゆーやつだよな。
この前先生言ってたじゃん、『今日授業の練習問題、次の授業の最初で当てるからなー』って。」
「げ、そーだっけ?」
「やべーじゃん?
あともう3分しかねーぞ」
ククッと笑いながら言う佐伯。
「やばい…どーしよ…」
サーっと血の気が無くなっていく。
数学の先生、めっちゃ怖いし厳しいし…苦手なんだよな…
目ぇつけられたくねぇ…。
「んー、じゃー可愛くお願いってやったら俺のノート写真撮らせてやる。」
「はーっ!?」
か、可愛く!?
んなもん出来るかぁ!
…ん?
ちょっと待てよ。
そんなことでノート見せてもらえるのか…?
いつもならコイツ、なにか奢れって言ってくるぞ。
それなのに今日は、お願いって言うだけ…
得だ!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。