第15話

風邪
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2018/12/30 12:41
「おい、大丈夫か?

風邪ひくんじゃね?」


くしゅん、くしゅん、と連続でくしゃみをするあたしに寄ってくる陽向。


「おー、大丈夫…多分。」


「まぁ、バカは風邪ひかないって言うもんな。」


「失礼な!!」


まぁバカっていうのは認めるけど!!!


ふわっ


柔らかいものが首元にあたる。


「とりあえずこれ巻いとけ」


陽向のマフラー…


「え、でも陽向はっ…」


「オレは大丈夫だよ、つか今走ったので暑くなったし。

じゃー、オレ帰るわ」


「あ、ありがとう…」


「ん。

じゃーな、凛。」


そう言って自転車の方へ向かう。


「うん、ばいばーいっ!」


「風邪ひくなよっ!」


自転車にまたがった陽向はあたし達に手を振って帰っていった。


…なんだかんだ優しいんだよな、アイツは。





「えーと、お粥は鍋が台所に置いてあるから好きなだけ取って温めて食べなさいね、あと…は…」


「おー、もう大丈夫、テキトーに冷蔵庫とか漁るし。

それよりおかーさん、仕事そろそろ行かないとやばいんじゃない?」


「いっけない、じゃあ行ってくるけど、安静にしててね」


「おー…」


時計を確認したお母さんはドアを閉めて部屋を出ていった。


階段をくだる足音を聞きながらあたしは目を閉じる。


…やってしまった。


今朝、目が覚めたら体がやけに重かった。


頭を少し起こしただけでズキズキするし、若干の寒気。


熱を測ってみると…38度2分。


風邪ひいた…


陽向に風邪ひくなよって言われてたのに…


あーぁ。





「…ん」


目が覚めて時計を見ると、2時半を過ぎたところだった。


…とっくに昼過ぎてんじゃん。


でも腹減ってねーな…


コンコン。


「おねーちゃん大丈夫?」


ドアが開いて、隙間から凛が顔を覗かせる。


あー、あたしが家にいるから保育園に行かせなかったのか。


「あぁ、大丈夫。

凛、伝染るから入ってくんじゃねーぞっ」


「大丈夫だよー、マスクしてるから!

あ、みかん持ってきたよぉー」


…我ながらよくできた妹だ…。


「ありがとう。」


体を起こして


ピーンポーン。


「あ、誰か来たっ」


「あー、あたしが出るよ。」


割と楽になったし。


ベッドから出て下に降り、インターホンのモニターを確認する。


「えっ、康輔!?」

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