その時、ポスターの横に貼られた沢山の写真群に気付いて、今度はそちらに注目する。
そこには、銀座の街や公園を写した美しい風景写真や、文化祭、水泳大会などの学校行事を楽しむ生徒達を写したスナップ写真、なぜか伊集院の自撮り写真も山のようにあったが、その他に、花や鳥など愛らしいものを写した写真などが、所狭しと並んでいた。
一方の杉本は、皆から顔を背けて、大きな独り言を呟いた。
呆れた日向子が指摘するが、邪なオーラに包まれた杉本の耳には届かない。
と不信感をあらわにしたアレクがテレサに告げた。
だが、すっかり写真に魅了されていたテレサは、微笑んで呟く。
アレクも「?」と写真に目を向けると、伊集院が気付いて、嬉しそうに近付いてきた。
見ていた多田が「ああ」と相槌をうつ。
そして、写真の説明を伊集院が始めた。
それによると、伊集院の写真は自撮りで、銀座の風景写真は多田、スナップ写真は杉本、可憐な花や鳥は、日向子の写真ということらしい。
すると、聞いていたアレクが眉間に軽く皺を寄せて、「?」と日向子を見た。
日向子は少し赤面して、コクリと頷いて言った。
結果、ムッとした杉本と日向子の間で、口喧嘩が始まってしまう。
テレサが驚いて、二人を心配そうに見ていると、安心させるように伊集院が笑って告げた。
そういうものなのか……、と不思議に思いながら頷いたテレサは、今度は、テーブルに置かれた写真を見て驚いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!