第14話

<第一章>-12
213
2018/11/16 01:21
雨上がりの銀座の街は、少し空気がヒンヤリしていた。
お礼は改めて、と挨拶を済ませた二人は、多田珈琲店を出て滞在先へと向かった。
大通りを行き交う人々は相変わらず多く、珍しくアレクがげっそりしている。
アレク
アレク
どうしてこんなに人が多いのでしょうか。ラルセンブルクの祭りの日より多いですよ
テレサ
テレサ
将軍のお城もそうだったわ。雨にも降られて。多田さんに助けて頂かなかったら、アレクとも会えなかったかもね
多田家で洗濯してもらって乾いたばかりの洋服を着たテレサは、アレクの後ろに続きながら、通りに面した和菓子屋を物珍しそうに見つつ、悪気なく答えていた。
アレク
アレク
会えなかったらどうするつもりだったんですか!?
その言葉にハッとしたテレサが前を見ると、振り返ったアレクの赤い目は、お説教モードに入っていて、いつも以上に赤く燃えて見えた。
アレク
アレク
テレサ様、しっかりなさって下さい。あなたは、いずれ……
女王になられるのですから、と言いかけたが、周囲の目を気にして続きを吞み込む。
アレク
アレク
もっと自覚を持って下さい
それだけは、低い声で伝えた。
心から反省したテレサは、しょんぼりして答える。
テレサ
テレサ
はい……。気をつけます
丁度そこは和光前の交差点で、信号待ちでアレクと並んで立ったテレサは、隣でお母さんに手を引かれて立っていた子供が自分を見上げているのに気付き、反射的にニコッと笑い返す。
すかさず
アレク
アレク
聞いてますか?
とアレクに問われ、
テレサ
テレサ
はい!
と背筋を伸ばした。

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