第11話

<第一章>-9
187
2018/11/09 01:56
額に手を当てて敬礼しつつ、明るく多田に挨拶をする。
金髪男子
金髪男子
ちーっす光良! いつものちょーだい!
多田は、彼の派手な登場に慣れているので、淡々と正造に告げた。
多田光良
多田光良
スペシャルコーヒーゼリーと、ブレンド一つ
多田正造
はい。いらっしゃい、薫君
金髪男子
金髪男子
ども! よ、ニャンコビッグ! 今日もご機嫌だな!
そう言って、金髪男子は、背を向けたニャンコビッグの背中を撫でようと手を伸ばした。
気配を察知したニャンコビッグは突如豹変。目にも留まらぬ速さで振り返ると、リーチが伸びた前足で「シャー!!」と彼の顔をひっかこうとする。
その様子を、すかさず多田がスマートフォンでパシャ、と撮影。
間一髪で難を逃れた金髪男子は、尻餅をついて床にひっくり返った。
金髪男子
金髪男子
うわっ!? あぶねええええ!!
多田ゆい
今日の『戦慄のニャンコビッグブログ』更新だね!
楽しそうにケラケラ笑うゆいを見て、テレサが不思議そうに問いかける。
テレサ
テレサ
戦慄のニャンコビッグ?
ゆいは嬉しそうに「これだよ!」とノートパソコンを開く。
画面には多田珈琲店のブログが表示されていて、凶悪な顔で襲いかかるニャンコビッグの写真がずら~っと何枚も並んでいた。
テレサ
テレサ
まぁ、ニャンコビッグさんは、戦うサムライネコさんなのですね
驚いたテレサに、ニャンコビッグは得意顔で「ニャ」と返事をする。
ようやく立ち上がった金髪男子は、テレサの存在に今更気付き、不思議そうに顔を覗き込む。
金髪男子
金髪男子
何? 誰誰、この金髪マドモアゼルちゃんは? お初にお目にかかります、だよね?
多田ゆい
お客さんだよ、お兄ちゃんの
金髪男子
金髪男子
光良の!? 彼女!? マジで!? 噓だろ、聞いてないよ!?
と騒ぐ後ろで、ゆいは「ないない」と手を横に振っているが、金髪男子は気付かないまま、テレサの髪を至近距離から熱く見つめ、妙な対抗心を燃やして真剣に尋ねた。
金髪男子
金髪男子
この金髪、本物?
テレサ
テレサ
え……?
と戸惑うテレサを見て、
多田光良
多田光良
おい、伊集院
と多田が注意する。
その時、カラン! と再び扉のカウベルが鳴って、
アレク
アレク
テレサ!? 離れて!!
鋭い叫び声とともに、血相を変えたアレクが疾風のように飛び込んで来て、テレサに近付きすぎていた伊集院と呼ばれた金髪男子に、ドスッ……! と見事な回し蹴りを決めた。
伊集院薫
伊集院薫
のわあああああああ!?
吹っ飛ばされた伊集院は、壁に顔の右側を強打して、ずずず……と床に落ちていく。
多田とゆい、正造とニャンコビッグが、呆気に取られて言葉を失う中、
テレサ
テレサ
アレク……!?
驚愕したテレサの声が店内に響いていた。

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