額に手を当てて敬礼しつつ、明るく多田に挨拶をする。
多田は、彼の派手な登場に慣れているので、淡々と正造に告げた。
そう言って、金髪男子は、背を向けたニャンコビッグの背中を撫でようと手を伸ばした。
気配を察知したニャンコビッグは突如豹変。目にも留まらぬ速さで振り返ると、リーチが伸びた前足で「シャー!!」と彼の顔をひっかこうとする。
その様子を、すかさず多田がスマートフォンでパシャ、と撮影。
間一髪で難を逃れた金髪男子は、尻餅をついて床にひっくり返った。
楽しそうにケラケラ笑うゆいを見て、テレサが不思議そうに問いかける。
ゆいは嬉しそうに「これだよ!」とノートパソコンを開く。
画面には多田珈琲店のブログが表示されていて、凶悪な顔で襲いかかるニャンコビッグの写真がずら~っと何枚も並んでいた。
驚いたテレサに、ニャンコビッグは得意顔で「ニャ」と返事をする。
ようやく立ち上がった金髪男子は、テレサの存在に今更気付き、不思議そうに顔を覗き込む。
と騒ぐ後ろで、ゆいは「ないない」と手を横に振っているが、金髪男子は気付かないまま、テレサの髪を至近距離から熱く見つめ、妙な対抗心を燃やして真剣に尋ねた。
と戸惑うテレサを見て、
と多田が注意する。
その時、カラン! と再び扉のカウベルが鳴って、
鋭い叫び声とともに、血相を変えたアレクが疾風のように飛び込んで来て、テレサに近付きすぎていた伊集院と呼ばれた金髪男子に、ドスッ……! と見事な回し蹴りを決めた。
吹っ飛ばされた伊集院は、壁に顔の右側を強打して、ずずず……と床に落ちていく。
多田とゆい、正造とニャンコビッグが、呆気に取られて言葉を失う中、
驚愕したテレサの声が店内に響いていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。