そして放課後になったところで──と言っても、早帰りの日なのでまだ午後一時過ぎだったが──、彼女は教室で、テレサ達に声をかけた。
テレサがニコッと笑って会釈すると、日向子は生真面目に頷き返してから尋ねてくる。
テレサが喜んで申し出を受けようと頷きかけるが、すかさずアレクが引き取っていた。
日向子が戸惑いつつも委員長の務めとして伝えると、テレサはニコッとアレクを見る。
アレクが渋々了承したので、テレサは明るく頷き返してから、再び日向子に頭を下げる。
アレクも小さく目礼すると、日向子はほっとしたように「じゃあ」と二人を連れ出した。
恋ノ星高校の歴史は古い。明治時代に創立されたということもあり、都心の中心部にありながらも敷地は広く、校舎や体育館、グラウンドなどの施設が比較的ゆったり造ってあった。
自由でのびのびした校風は、生徒の大半がエスカレーター式で系列の大学にそのまま進むからでもある。一方で『文武両道』をモットーとするので、部活動は熱心に行われていた。
そんな説明をしつつ、日向子は校内を案内していた。
テレサとアレクは、学校案内のパンフレットも広げつつ、楽しそうに話している。
そう言ったテレサの瞳が、校門脇の桜の花を捉える。
それで、先日の将軍の城をふと思い出し、目をきらきらさせながら日向子に尋ねてみた。
返事に困った日向子を見て、アレクがすまなそうに頭を下げる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!