第15話

<第一章>-13
200
2018/11/16 01:21
それから三十分もすると、夕方になって日は傾いてきた。
銀座の街に明かりが灯り、大通りは、昼とは少し違った華やかな雰囲気に包まれてきた。
そして、再び交差点の前に辿り着いたアレクは手にした地図を見て、途方に暮れていた。
アレク
アレク
おかしいですね……。この辺りのはずなんですが……
テレサも先程見た和菓子屋を見つけて、首を傾げる。
テレサ
テレサ
ここ、さっき通った道じゃない?
アレクも確かにそうだと思い、地図を穴のあく程見つめて眉間に皺を寄せる。
テレサもアレクの助けになれないかと思って覗き込む。
テレサ
テレサ
それって、レイチェルが描いてくれた地図?
アレク
アレク
はい……
テレサ
テレサ
難しい、のね……
アレク
アレク
はい……
アレクが地図を読めない訳では、決してない。
レイチェルの手描きの地図は自由すぎて、難解な目印ばかり──『風が心地よい公園』『猫の集会所』『三時のおやつを食べたら楽しかった場所』など──が目立っていたのだ。
これをどう捉えれば……とテレサも悩んだが、この交差点が目印なのは間違いなさそうだ。
テレサ
テレサ
多分……、こっちの方かしら?
アレク
アレク
行ってみましょう
テレサが励ますように明るい声を出したので、アレクも少し微笑んで頷き、二人はもう一度、今来た道へと引き返してみた。
そうして十字路を曲がってみると、見覚えのある少年が二人、それぞれに写真を撮っていた。
テレサ
テレサ
あれは……
テレサとアレクが気付くのと同じタイミングで、
伊集院薫
伊集院薫
うわ~、偶然また会えるなんて、俺たち、マジ、運命の赤い糸で結ばれてたりして!?
と言って、伊集院が手を大きく振り、遅れて、多田が一眼レフカメラから顔を上げた。
しかし、明るく手を振り返すテレサの隣でぎろっと睨むアレクの眼光に射抜かれた伊集院は、慌てて目を逸らして目の前のショーウィンドウの人形に向け、「ね!」と笑いかけて誤魔化していた。
そうして多田達と合流した二人は、「ここに行きたいんです」と地図を見せた。
伊集院が
伊集院薫
伊集院薫
……これって地図?
と目を丸くしていたが、目的地がわかった多田は、
多田光良
多田光良
ああ
と頷いた。
アレク
アレク
グランドパレス銀座って書いてあるので、おそらく宮殿だと思うのですが
とアレクが真面目に続けると、その名前は知っていた伊集院が、ビックリして聞き返した。
伊集院薫
伊集院薫
そこが、テレサちゃん達の泊まるところ?
テレサ
テレサ
はい
伊集院薫
伊集院薫
マジで!?
アレク
アレク
ご存知なのですか?
そう言ってアレクに見られただけで伊集院がびびって身構えるので、代わりに多田が答えた。
多田光良
多田光良
ご存知です。それは……

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