第13話

<第一章>-11
219
2018/11/09 01:56
アレク
アレク
恋する事件簿……
恋愛小説が大好きなアレクは、そのタイトルに心惹かれ、背表紙を熱く見つめる。
アレクが興味を持ったと察知したゆいは、一冊手にしてずいと詰め寄った。
多田ゆい
読みます!? お貸ししますよ!
前のめりに勧めてみると、
アレク
アレク
どうも
と受け取ってもらえたので更に上機嫌になったのか、嬉しそうに会話を続ける。
多田ゆい
ていうか、二人共、日本語、すっごい上手ですよね!
テレサ
テレサ
『れいん坊将軍』を見て覚えたんです!
多田ゆい
ええ~!? じっちゃんも『れいん坊将軍』、大好きだよね!?
正造はカウンターの中で新聞を読みつつ、笑顔で頷き返した。
カウンター席に座って珈琲を飲みながら聞いていた伊集院が、不思議そうに多田に尋ねる。
伊集院薫
伊集院薫
光良、『れいん坊将軍』って、海外で放送してんの?
茶碗を拭いていた多田が
多田光良
多田光良
さぁ……
と返すと、
伊集院薫
伊集院薫
てか、テレサちゃんってさ、どこの国の人なの?
元来、人懐っこい伊集院が振り返って、笑顔でテレサに尋ねる。
テレサ
テレサ
ラルセンブルクですよ
多田ゆい
えええ!? 山村ポワロンよしこの国だよ! すごい偶然!
と目を輝かせて喜ぶゆいを見て、テレサも嬉しくなって微笑み返す。
伊集院薫
伊集院薫
て、ラルセンブルクってどこよ?
再び疑問にぶち当たった伊集院は、素直に言葉に出した。
すると、微笑んでいた正造が珍しく口を開いた。
多田正造
ヨーロッパにある小さな国で、緑と渓谷に囲まれた、自然が美しい国だよ。ね?
そう言ってもらえると、テレサは嬉しくなって
テレサ
テレサ
はい!
と元気に答える。
伊集院薫
伊集院薫
へ~、ヨーロッパのね~。なんかいいな。行ってみたいな~。な、光良
伊集院は同意を求めてみるが、多田は歯切れが悪く、
多田光良
多田光良
ああ……
と頷いた。
伊集院薫
伊集院薫
あ、そっか。お前、高所恐怖症だもんな
多田ゆい
だからお兄ちゃん、飛行機も怖いんだよ
ゆいはペロッと舌を出してテレサとアレクに言いつけるが、多田はちろっと睨んで訂正する。
多田光良
多田光良
……怖いわけじゃない。乗りたくないだけだ
伊集院薫
伊集院薫
同じだよ!
思わずテレサが「ふふっ」と吹き出すと、つられて伊集院も大笑いして、
伊集院薫
伊集院薫
ははは! ねー、おかしいよね~、テレサちゃん?
と嬉しそうにテレサに近付こうとした所、察知したアレクが突然、立ち上がる。
伊集院薫
伊集院薫
うおっ!?
思わず身構えた伊集院を冷たく一瞥してから、アレクは静かに告げた。
アレク
アレク
そろそろ我々はお暇を

プリ小説オーディオドラマ