恋愛小説が大好きなアレクは、そのタイトルに心惹かれ、背表紙を熱く見つめる。
アレクが興味を持ったと察知したゆいは、一冊手にしてずいと詰め寄った。
前のめりに勧めてみると、
と受け取ってもらえたので更に上機嫌になったのか、嬉しそうに会話を続ける。
正造はカウンターの中で新聞を読みつつ、笑顔で頷き返した。
カウンター席に座って珈琲を飲みながら聞いていた伊集院が、不思議そうに多田に尋ねる。
茶碗を拭いていた多田が
と返すと、
元来、人懐っこい伊集院が振り返って、笑顔でテレサに尋ねる。
と目を輝かせて喜ぶゆいを見て、テレサも嬉しくなって微笑み返す。
再び疑問にぶち当たった伊集院は、素直に言葉に出した。
すると、微笑んでいた正造が珍しく口を開いた。
そう言ってもらえると、テレサは嬉しくなって
と元気に答える。
伊集院は同意を求めてみるが、多田は歯切れが悪く、
と頷いた。
ゆいはペロッと舌を出してテレサとアレクに言いつけるが、多田はちろっと睨んで訂正する。
思わずテレサが「ふふっ」と吹き出すと、つられて伊集院も大笑いして、
と嬉しそうにテレサに近付こうとした所、察知したアレクが突然、立ち上がる。
思わず身構えた伊集院を冷たく一瞥してから、アレクは静かに告げた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。