気が付いてそちらを見ると、またしても、あの黒髪の少年が立っていた。
と驚くテレサに、
と彼は尋ねた。
偶然、道路の向かいから全てを目撃してしまった少年は、そのまま知らんぷりもできず、声をかけたのだ。
テレサもこう何度も顔を合わせていると、少年に親しみを覚えて、笑顔になって答えた。
しかし、正直に告げると、少年は、眉間に軽く皺を寄せて聞いてくる。
我ながら情けなくなって思わず苦笑すると、タイミング悪く、お腹もグ~っと鳴ってしまう。
恥ずかしくて赤面していると、また白い猫が心配そうに見上げてくるので、安心させようと微笑む。
思わず、少年は突っ込んでしまった。そして、こう続けた。
テレサの脳裏に、アレクの言葉──知らない人についていかないでください──が蘇り、一瞬、戸惑う。その気持ちを察したように、少年は少し困ったように告げる。
驚いて目を瞠るテレサ。
その言葉は、大好きな『れいん坊将軍』で聞いた台詞とそっくりだった!
雨に濡れながら猫を抱いた娘に、傘を差しだした将軍が、間違いなく、こう言ったのだ。
テレサは嬉しくなって、きらきらした目で少年を見つめて尋ねてみる。
皆まで言う間もなく、キッパリ否定された。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。