第9話

事故
491
2019/01/17 13:44
私は、間違っていたのだろうか。



















もう、何もかも分からない。





















目の前の光景は何?

何で赤いの?

何で悲鳴が聞こえるの?



















ねぇ、嫌だよ?

















私を、おいて逝かないで。






























数時間前...












キーンコーンカーンコーン





終業のチャイムが鳴る。
潮目 渚
終わったぁ...
桐島 和人
よっしゃあ!帰るぞー!
潮目 渚
いや、和人は日直の仕事
残ってるでしょ。
桐島 和人
う...
潮目 渚
ざーんねーんでしたぁー。
私はそう言って「にやり」と笑う。
桐島 和人
くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!
葉連 暮斗
うっせぇ。
暮斗はそう言って、呆れた顔をする。
潮目 渚
ゆっくり歩いてるから!
葉連 暮斗
後でおっかけて来い。
桐島 和人
うぅ..分かった...
葉連 暮斗
じゃ、渚。帰るぞ。
潮目 渚
うん!
それから私と暮斗は教室を出た。























帰り道...








葉連 暮斗
もう、大丈夫か...?
...え?
葉連 暮斗
辛く、ないか...?
あぁ、そのことか。
潮目 渚
うん。大丈夫。
まだ、心配してくれたんだ...
潮目 渚
ありがと。
私はそう言って、笑った。



「ありがと。」

その言葉に私は、沢山の意味を込めた。


守ってくれてありがとう。

心配してくれてありがとう。

一緒にいてくれてありがとう。


他にも、沢山。


暮斗や和人にお礼を言うなら、一生かかっても
終わらない。

それくらい、沢山のものを二人から貰ったから。
葉連 暮斗
また何かあったら言えよ?
暮斗はそう言いながら、笑って、私の頭を
わしゃわしゃと撫でた。
潮目 渚
わっ!ちょ、
葉連 暮斗
ははっ。髪、ぐしゃぐしゃ。
暮斗はそう言って「にかっ」と笑った。
潮目 渚
く、暮斗のせいなんだからぁ!
葉連 暮斗
ははっ。ごめんごめん。
また、「にかっ」と笑った。

何か、幸せだなぁ...
潮目 渚
あっ!そういえば、来週
暮斗の誕生日だね!
潮目 渚
何か欲しいのある?
葉連 暮斗
ない。
潮目 渚
即答かよっ!
潮目 渚
真面目に考えてー。
私がそう言うと、暮斗は一瞬考え込んでから
私の頬を優しく摘まんで、
葉連 暮斗
渚が欲しい。
と言った。
潮目 渚
ふぁ⁉
ななな何を言ってるんだ⁉暮斗⁉

そんなこと、軽く言っちゃ駄目でしょ⁉
潮目 渚
ひょーはんはひゃめへよぉー。
葉連 暮斗
冗談じゃないとしたら?
ん?あれ?何か、この展開...

って、そうじゃなくて!
潮目 渚
ほっへふほひいはい。
葉連 暮斗
ほっぺ痛い?ごめん。
暮斗はそう言って、手を離す。
潮目 渚
んもぉ。からかわないでよねぇ。
葉連 暮斗
からかってねぇし...
潮目 渚
ん?何か言った?
葉連 暮斗
いや、何でも。
潮目 渚
何だよ、それ...
私はそう言って笑った。




































その時だった。




















誰かに、背中を押された。


私は、その反動で、横断歩道に飛び出す。




















信号は、赤だった。




















飛び出してはいけない、色。





















キィー!





車のブレーキ音が辺りに鳴り響く。























私、死ぬの...?

























突然、温かいものが私を包み込む。























ドン!







車と、衝突した。



















...はずなのに。



痛くなかった。



















辺りがざわめく中、つぶっていた瞼を上げる。























私は、人の悲鳴、叫び、動揺の声、ざわめき、
全て、聞こえなくなった。


まるで、音の無い世界だった。




















ただ、目の前の光景を呆然と見ていた。



















目の前で、倒れているのは..暮斗...?



















じゃあ、何で...




















目の前が赤いの?

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