少し遠出になるけれど、まふのために、紅葉を見に、山へ来た。
…少し、苦しいな
山…だからか?
きっと気の所為。そう思って、俺はまふのところへ走って行った。
苦しい、クラクラする。表にこそ出さないが、吐き気や目眩、息苦しさがさっきから収まらないのだ。いや、寧ろ酷くなっている。
薬を飲もうにも、飲み物を持ってこなかった。
ロープウェイの所に自販機がある事を下見で知っていたので、持ってこなかったのだ。
揺らぐ視界にまふが笑顔で俺を呼んでいるのが見えた。
僕が振り返ると同時に階段の段差から足を踏み外し、転がって行くそらるさんが見えた。
急いで僕が階段をかけ降りると、頭から血を流すそらるさんが横たわっていた。
応答が無い、腕の脈は弱々しく、今にも無くなりそうだった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。