心電図の音が響く。
真っ白で無機質な部屋に花を置いた僕はそらるさんの声のする方へ振り返った。
両腕には包帯が巻いてある。
僕の飛び降り以来歩けないにも関わらず、窓から何度も飛び下りる。
意図分からない。どうしてそんな事をするのか、僕には何も分からなかった。
今までそらるさんの全て分かっていたはずの僕はもう居なくて、分からないことだらけだった。
まふはふわっと優しく微笑んだ。
僕が持ってきたのはピンク色の胡蝶蘭だった。
花言葉は私は愛しています。
鈍感なそらるさんはきっと分からないだろう。
僕が見たのは窓の縁に足をかけるそらるさんだった。
僕は夢中でそらるさんの腕を引っ張り、引き寄せ、ベットに倒れ込んだ。
僕の腕の中でそらるさんは泣いていた。
僕はそう言ってそらるさんの頭を撫でた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。