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第4話

無くし物
89
2019/01/14 10:35
あなた

おい、お前。
こんな所で何してんだ。

美香
美香
え…?
お、おじいちゃっ…がっ!
い、家で倒れて…
あなた

落ち着いて話せ。

思わず冷たくしてしまった。
余りに久しぶりに話しかけたものだから、何を話せば良いのか分からなかった。
美香
美香
あな…たは?
誰なっ…ですか?
あなた

えっ………俺か…?
俺は、あなただ。

美香
美香
あなたくん…
私は美香って言いますっ!
美香
美香
あなたくんは、どこの学校に通ってるの…?
どうしてここにいるの?
あなた

えっ…

いつの間にか彼女の涙は止み、質問の嵐がやって来た。

なぜだか、懐かしい気持ちに包まれた
あなた

俺は…3歳の頃からここに居る。

美香
美香
え…?
なんで…?
あなた

それは…

美香
美香
あ、そうだよね…
言いたくないことだって、あるよね
あなた

ちがっ…

美香
美香
よし!
おじいちゃんの手術が成功するようにお祈りしてくる!
あなたくんも一緒に行こうよ!
あなた

俺はここから離れられない。

美香
美香
そっか…
俺はどうして入院しているのだろう
どこも悪くはない。
親に相手にされず、身寄りが無いこと位しか不便ではない。

なのに、どうして入院しているのだろう

どうして入院することになったのだろう

どうして俺は独りなのだろう

俺は…
美香
美香
じゃあ、行くね
あなた

あぁ…

なにかが思い出せない。
なにかを無くしてしまった。
そのなにかは
わからない

今生きている理由さえ

わからない
あなた

俺には…生きている意味がないのに
なぜ、生きているんだ…

そんな思いも
星屑のように散ってしまった

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