第5話

第5夜 イケメンと真夜中のキッチン
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2019/03/31 05:00
わたしが最も苦手なもの。

イケメン(三次元に限る)、ヤンキー、吠える犬。

その3つを兼ね備えているのが……
生形智也
生形智也
おい、そんなにびびんなくてもいいだろ!
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
ヒィィィィ!!
ワンコ系金髪イケメンの智也。シェアハウス到着初日にわたしに抱きついてきたやつだ。

今日なんてピアスがじゃらじゃら付いてるし、金髪だし、声が大きい。

そして、誰かれ見境なく吠えてくる。この子に「人見知り」という概念はないのだろうか。

アニメイベントが終わり、友達と夕飯を食べてから帰宅。コンビニで買ってきたアイスを食べようと、キッチンに入っただけなのに……。
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
なんで、こんなに散らかってるのよ!
生形智也
生形智也
しょうがないだろ、小腹が減ったんだよ。
キッチンの床には、インスタントラーメンの細かいくずが鳥の餌のように散らばっていた。
生形智也
生形智也
一袋全部だと太ると思って、半分に折ったらこうなっちまったんだよ〜!
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
ちょっと、静かにしゃべりなさいよ。
たしか、冬史郎さんは原稿中、千春さんは明日バイトのシフトが早くてすでに寝ているはずだ。優馬は知らないけど、もう夜遅い。シェアハウスの同居人に迷惑をかけるわけにはいかない。

だから、音が鳴る掃除機をかけるわけにもいかない。

早くアイスを食べたいわたしは、雑巾で床に落ちたラーメンくずを地道に集めはじめた。散らかした犯人である智也も、雑巾を取ってくる。
生形智也
生形智也
あのさ、ありがとよ。
生形智也
生形智也
あと、このまえはごめん。
生形智也
生形智也
あんた、男が苦手なんだってな。
生形智也
生形智也
そんな子がいきなり俺みたいのに抱きつかれたらビビるし、キモいってなるよな。まじでごめんな。
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
そこまで思ってないよ!
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
キモいとは思ってないよ。謝ってくれてありがとうね。わたしも、急に部屋に入っちゃったりしてごめんね。
生形智也
生形智也
へへっ。
生形智也
生形智也
俺もさ、優馬みたいに菜ノ花って呼んでいいか?
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
いいけど、智也、わたしよりも年下でしょ?もうちょっと、敬ってよ。
生形智也
生形智也
えっ?俺、高3だぜ。
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
はっ!?受験生!?
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
そんなんで!?
生形智也
生形智也
おう、俺の学校わりと服装自由で、俺はとっくに専門受かっちまったからこんなんでもべつにいいんよ。
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
そうだったんだ……。
生形智也
生形智也
おっ、半分くらい片付いたか♪
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
次からはラーメン折るとき、未開封の状態で割ったほうがいいよ。それなら飛び散らないから。
生形智也
生形智也
おう!そうするわ。サンキュー😆✨
掃除もあと少しというところで、わたしと智也の頭がぶつかった。
生形智也
生形智也
あっ、ごめん。
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
シュバババババッ!
生形智也
生形智也
そんな隅っこに逃げないでよ😅
生形智也
生形智也
傷つくわ〜。
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
(あっ、そっか。イケメンとはいえ、彼らも人間。千春さんも寂しいって言ってたけど、わたしのこういう態度は失礼なんだ。)
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
ごめん。少しずつ慣れるようにがんばるね。
生形智也
生形智也
おう!気長に待ってるわ。
苦手なイケメンと夜のキッチンに2人きり。そういえば、このまえ読んだ本にも似たような場面があったっけ。
神谷菜ノ花
神谷菜ノ花
智也、わたしもラーメン食べたいな。
生形智也
生形智也
おう、一緒に食おうぜ。
ラーメンを食べたら、アイスを2人で半分こしよう。まずはそこからだ。

鍋に注ぐ水が、蛍光灯の光を受けきらきらと輝いていた。

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