「海外旅行に行ってくるね🤗❤️✈️」
そう言い残し、わたしの両親は去っていった。
最愛の一人娘であるはずのわたしを残して……。
懸賞で当たった海外旅行に両親が行っている間、ママの遠い親戚である人の家に、居候させてもらうことになったんだけど……。
そこにはなぜか、幼馴染で現在絶賛絶縁中の優馬がいた。
優馬とは小学校までは仲が良かった。けど、ある事件をきっかけに一切口を利かないように、関わらないようにしていたのに……。
同学年のなかでも目立つグループ、通称“パリピグループ”にいる優馬。体育祭や文化祭では活躍し、上級生や他校の友達も多い。一方、わたしは二次元のイケメンを愛するオタクで、高校生活を推しに捧げているのだ。
そんなわたしたち2人が、まさか共同生活をすることになろうとは……。
荷物を抱えてわたしは階段を上がる。
ドアを開けると、見知らぬ男性(イケメン)が着替えの最中だった。
セーターを脱ぎかけた男性から目を逸らしながら、わたしは慌てて扉を閉める。
その隣の部屋をノックする。返事はない。
カーテンを閉めきっている部屋は暗く、室内をよく見通せない。電気のスイッチも手探りで探すが、見つからない。
カーテンを開けようと、おそるおそる部屋に入る。
なにかにつまずいて転んでしまった。
いきなり誰かに羽交い締めにされる。
広い肩幅、太い腕。強く鍛えられた足の筋肉は、本気で締めつけられたら肋が折れてしまいそうだ。
謎の金髪男子から解放され、ふたたび抱き枕にされないよう、わたしは高速で部屋の隅に移動する。
一堂に会した見目麗しいイケメンたち。
普通の女の子なら、こんな嬉しいハプニングに舞い上がってしまうだろう。
けど、このイベントに召喚されたのはよりにもよってこのわたしなのだ。
うまくやっていけるわけがない。
わたしは二次元のイケメンは大好き。
だけど、三次元の、現実のイケメンは大の苦手なのである……!!
かくして、わたしのシェアハウス生活は幕を開けたのであった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!