第2話

ストーカー
9,002
2018/08/08 03:32
「···誰もいないよね···?」
私は後ろを振り返った。
私は、実家に帰省する為に実家の最寄り駅を出た。
私が夢を叶える為に会社を辞めたのは半月前。
私は昔からゲームが好きだった。
だからゲームを作りたかった。
その為に大手スマホゲーム会社に就職して会社の経営を学んだ。
これでも、日本の最高学府を学年首席で卒業したのだ。
一発で就職内定は決まった。
けれど、問題は就職後だった。
社長の息子···白鷺蓮先輩にストーキングされ始めたのだ。
最初は会社内だったのに、気が付いたら家まで付いて来ていた。
社長息子なんかに被害届を出したら、自分の立場が危うくなるから下手に警察に相談出来なかった。
実家の近くまで到着した時、見覚えのある白鷺先輩の黒塗りのリムジンが、私の横に止まった。
「あなた!ここにいたの!?何で!何で会社を辞めたの!?ねえ!あなた!!答えてよ!!」
「し、白鷺先輩···?」
「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!?!?!?!?!?!?僕はこんなにもあなたの事を想っているのに!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!どうしてあなたは応えてくれないの!?!?!?!?」
首を絞められ、動けない私は抵抗なんて出来なかった。
「···そうだ···あなたをこのまま殺しちゃえば良いんだ···僕の命令に従わないなら、あなたを殺して僕の人形にすれば良いんだ···。」
「···っ!!」
誰か私を助けて!!お願い!このままじゃ殺されちゃう!
徐々に白んでいく視界に見える白鷺先輩の嘲笑がとても怖かった。
誰でも良いから、助けて!!
「ねえ、おそ松兄さん···ってあなた!?」
聞き覚えのある懐かしい声がした途端、私の首を絞めていた白鷺先輩の手が離れた。
突然入ってきた酸素に身体が驚いたのか、何度か咳をした。
「あなた!大丈夫!?」
「チョロ松君···、だ、大丈夫···。」
私の背中を優しく擦るのはチョロ松君。
「なあ、何で人の首なんて絞めてたわけ?」
私の首から白鷺先輩の手を離し、白鷺先輩を尋問しているのはおそ松君。
先輩を取り押さえているのはカラ松君と十四松君。
「コイツ頭イかれてるわ···1回記憶吹っ飛ばしておく?」
おそ松君の尋問を静観して、物騒な事を言ったのは一松君。
「一松兄さんに激しく僕は同意するね。」
一松君の意見に賛成したのはトド松君。
「あなたとは!一生を誓い合ったんだ!なのに、僕から逃げたんだ!っ!?」
先輩が話している途中で一松君は先輩の胴体を蹴り上げた。
「喚かないでくれる?耳障りなんだけど···。」
「貴様!」
先輩は叫んだけど、トド松君に首を絞められてしまった。
「ねえ、苦しい?どう?苦しいでしょ?君があなたの首を絞めた力はこんなものじゃないでしょ?もっと絞めてあげる。」
「っ!?」
力を強めたトド松君は冷笑を浮かべた。
一松君はもう一度蹴り上げた。
「そろそろ良いぞ、十四松。」
おそ松君が突然十四松に何かの許可を出した。
「本当ー!?久し振りだから腕が鳴るなー!」
道路に投げていた金属バットを十四松は手に取り、笑った。
「バイバーイ。」
先輩の頭に振り落とした金属バットを持った十四松君は鈍い音を立て先輩の頭を殴り、噴き出た血が付着した。
「っ!?」
私は目を疑った。
「う、嘘···死んじゃった···?」
「んー、まあ、あの出血量なら運が良くて記憶喪失、運が悪かったら全身麻痺かなー?」
おそ松君は何もなかった様に、平然と言い放った。
白鷺先輩を取り押さえていたカラ松君は、顔に付着した白鷺先輩の血を、パーカーの袖で拭った。
「十四松、もう少し手加減しろ。あなたが軽くパニック状態になっているぞ。」
カラ松君は私に近付き、笑い掛けた。
「カ、カラ松君···。」
「あなた、怖いか?」
カラ松君の笑みは幼い頃から変わらない。
その笑みがパニック状態の私を落ち着かせた。
「少し怖いけど、大丈夫···。」
「そうか、なら良かった。」
カラ松君は私に手を差し出した。
「帰ろう。」
私はその手を取った。

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