❲図書室❳
私と将吾は、図書室でmusical gameに関する本がないか
探していた。
私は表紙に「謎の生命体について」と書かれた本を将吾に見せた。
それは本というよりレポートのような物で、何枚かの紙を
ホチキスで留めた簡単な物だった。
私は表紙をめくった。
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【謎の生命体について】
これは、2019年◯月に起こった出来事について述べる
物とする。
ある日、学校にいる全ての高校生にメールが届いた。
メールの送信元は「音楽家」。
内容は、これからmusical gameという名の鬼ごっこを
始める、という事だった。
学校には鬼が数体現れた。
体長2メートルほどはあり、まるで節分の鬼ような顔
をしていた。
クラスメートは次々と殺されていった。
金棒で頭を砕かれ、手足を引きちぎられ、内臓を取り出され。
今でも脳裏に焼き付いて離れない、友達の死に顔。
鬼には感情というものがないのだろうか。
生徒はまるで遊び道具のように殺された。
学校の外に出ようとしたものは殺された。
メールを拒否したものは殺された。
そして、音楽室に近づいたものも殺された。
音楽室から聞こえてくるピアノの音色には、何か
触れてはいけない秘密があるのだろうか。
…このデスゲームに、終わりはあるのだろうか。
そして私は、死んだ鬼の死体を解剖
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その先は読めなかった。
長年放置されていたような、赤黒い液体が紙にベットリと
ついていた。
「この先を知ってはいけない」、か。
途切れた文章からして、鬼の構造とかが書かれていたのかな…?
生徒の悲鳴が遠くから聞こえる中、私達は黙って
途切れた文章を見つめていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!