第5話

4話
412
2018/11/04 12:20
「オレ先輩みたいになりたいっす!まじ憧れっす!」

「ありがと」


片桐くん、いつも通りだ。
やっぱり昨日のは冗談だったんだなあ。なんだか残念なような、ホッとしたような気持ちになる。


「先輩」


片桐くんに顔を向けた時、ふっと視界が暗くなって、耳元で真剣な声が響いた。


「――昨日の告白、まじっすから」


……え。

片桐くんは元のように私と向き合うと、ニコッと明るく笑った。


「じゃ、お先に失礼しますー!」


軽く右手を上げて、体育館の外へ走り去っていく片桐くん。
何も言えない私の代わりに、心臓がドクドクとうるさく鳴っていた。


「なんだ、結局付き合ったの?」

「つ、付き合ってないから!」


見ていたらしい空に尋ねられ、私は食い気味に叫ぶと小走りでボールカゴを倉庫へ運んだ。

びっくりした。急にすごく近くて……びっくりした……。

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