「気をつけー礼」
「「ありがとうございました!!」」
練習後の顧問の話も終わり、片付けに取りかかる。
男バスは私たちより先に片付けを始めていたため、体育館を出ていく姿がちらほら見えた。
いいなあ男子。顧問の先生の話短くて……。
「先輩!」
聞き慣れた声が背後からして、私は体育倉庫へ向けて押していたボールカゴを一旦止まらせ、振り返った。
「片桐くん、お疲れ」
「お疲れっす!何か手伝いましょうか?」
「いや、いいよ。ありがと」
「了解っす!」
片桐くんが二カッと笑う。
いつも片桐くんはこうして練習後に声をかけてくれる。今のはほぼ毎日しているやり取りだった。
「先輩今日もカッコよかったっす!五十嵐先輩を抜いた時なんかもう……!」
「ああ、あれね。シュート入って良かったよ。すぐ大熊くんがヘルプに来た時はダメかと思ったけど」
「いやーあのフェイクは引っかかりますよ!やばかったっす!」
練習の最後に行った試合形式の話題で盛り上がる。
このバスケ部では、練習を締めくくるメニューとして男女対抗で5対5の試合形式を必ず行う。元はどちらも人数が少なかったため仕方なしにだったらしいが、もうそれで慣れたからと、男女合わせて部員が40人以上いる今も続いている、もはや伝統だ。
……しかし……。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!