第3話

1.イケメン兄弟が引っ越してきた!-2
2,932
2018/09/07 01:39
城崎 杏
城崎 杏
ど、どちらさま……?
イケメンなんて見慣れていないどころか、男子とロクにしゃべったこともない私は引きつった顔をしたまま、目の前にいる突然現れたイケメン二人に声をかける。

すると、並んでいる笑顔が明るい方のクリクリとした大きな目を輝かせた男の子が大きな口を開け、人なつっこい笑顔を振りまいてきた。
相良 隼介
相良 隼介
兄ちゃん、やっぱりここだよ、甘い匂いの正体! スッゲーいい匂いー
相良 涼真
相良 涼真
やめろ、恥ずかしい
そして「兄ちゃん」と呼ばれた人は、言葉の勢いのまま前に出てきた弟の服のえり首を右手でつかみ、動きを抑えている。
城崎 杏
城崎 杏
な、な、なに……? あなたたち……
完全にドン引き状態の私に気付いたのか、弟は後頭部を左手でかき、笑ってごまかしている。
そして「兄ちゃん」の方が、左手に持っていた洗濯洗剤が二箱入った紙袋を私の前にさし出した。
相良 涼真
相良 涼真
えーっと、となりに引っ越して来た相良というもんです。どうぞよろしく。あっ、これ仕事に行ってる親父から。どうぞって
そう言いながら、洗剤二箱を私に押し付けるようにわたす。
そして、その容姿にも目を見張るくらい驚いてしまった。
……なんてきれいな顔をしているんだろう、この人。

たいしてセットもしていなさそうな髪なのに、サラサラの黒色の髪と切れ長の瞳の色は同じ色をしていて、長いまつ毛にすうっと通った鼻筋と整い過ぎている唇の形と、まるで陶器のようなきれいな肌。

うん、真美が見たら、絶対興奮してめちゃくちゃはしゃぐような顔をしてるなって思った。
城崎 杏
城崎 杏
ありがとうござい……ます
相良 隼介
相良 隼介
ねぇ、もしかしてなんか作ってんの? キミん家の窓からね、朝からずっと甘い匂いしてたの。俺、気になっちゃって
ニコッと笑いながら、平気で距離をつめてくる弟。
私はいきおいよくうしろにのけ反ってしまった。
城崎 杏
城崎 杏
つ、作って……たけど……。あっ、匂いおとなりまで届いてた!?
相良 隼介
相良 隼介
全然大丈夫! いい匂いしてるねって言ってたんだ。それにキミ、エプロン似合うね、かわいい!
相良 涼真
相良 涼真
俺、甘い匂いきらいなんだけど
相良 隼介
相良 隼介
あー、兄ちゃんの言うことは気にしないでね
家じゅうに充満している甘い匂いにいやそうな顔をしている兄と笑顔がたえない弟。
なに……この兄弟……
あからさまにいやな態度をしている兄とずっと笑顔の弟……この二人の性格、全く正反対だ。
そんな兄のいやがりかたにカチンと腹が立ってしまう。
城崎 杏
城崎 杏
甘い匂いきらいだなんて変わってるのねー。変な人!
相良 隼介
相良 隼介
おっ、甘い匂い当たってる? てことはお菓子? すげぇ! お菓子作れるんだ
相良 涼真
相良 涼真
げっ……。マジで
そう言いながら口を手で押さえる仕草までする。
本当、最悪な人だ。この人。
いくらイケメンでも初対面でこの態度はありえないと思う!
城崎 杏
城崎 杏
いやな匂いがする家にまでわざわざごあいさつしてくださり、どうもありがとうございました! お母さんにも言っておきますので! ではさようなら!
もう話すこともなく、顔を見ないまま深く頭を下げて私は玄関の扉を閉める。
扉一枚向こうからは
相良 隼介
相良 隼介
あーあ、兄ちゃんはどうして女の子にはそんな態度取っちゃうのかなぁ。せっかくおとなりさんかわいい子だったのに
という弟の声が聞こえてきた。
城崎 杏
城崎 杏
か、かわいい……? む、無視、無視。もう関わることもないわよ
顔を赤くしたまま、ふんっと鼻息をあらくして家の中へと入って行く。

プリ小説オーディオドラマ