イケメンなんて見慣れていないどころか、男子とロクにしゃべったこともない私は引きつった顔をしたまま、目の前にいる突然現れたイケメン二人に声をかける。
すると、並んでいる笑顔が明るい方のクリクリとした大きな目を輝かせた男の子が大きな口を開け、人なつっこい笑顔を振りまいてきた。
そして「兄ちゃん」と呼ばれた人は、言葉の勢いのまま前に出てきた弟の服のえり首を右手でつかみ、動きを抑えている。
完全にドン引き状態の私に気付いたのか、弟は後頭部を左手でかき、笑ってごまかしている。
そして「兄ちゃん」の方が、左手に持っていた洗濯洗剤が二箱入った紙袋を私の前にさし出した。
そう言いながら、洗剤二箱を私に押し付けるようにわたす。
そして、その容姿にも目を見張るくらい驚いてしまった。
……なんてきれいな顔をしているんだろう、この人。
たいしてセットもしていなさそうな髪なのに、サラサラの黒色の髪と切れ長の瞳の色は同じ色をしていて、長いまつ毛にすうっと通った鼻筋と整い過ぎている唇の形と、まるで陶器のようなきれいな肌。
うん、真美が見たら、絶対興奮してめちゃくちゃはしゃぐような顔をしてるなって思った。
ニコッと笑いながら、平気で距離をつめてくる弟。
私はいきおいよくうしろにのけ反ってしまった。
家じゅうに充満している甘い匂いにいやそうな顔をしている兄と笑顔がたえない弟。
なに……この兄弟……
あからさまにいやな態度をしている兄とずっと笑顔の弟……この二人の性格、全く正反対だ。
そんな兄のいやがりかたにカチンと腹が立ってしまう。
そう言いながら口を手で押さえる仕草までする。
本当、最悪な人だ。この人。
いくらイケメンでも初対面でこの態度はありえないと思う!
もう話すこともなく、顔を見ないまま深く頭を下げて私は玄関の扉を閉める。
扉一枚向こうからは
という弟の声が聞こえてきた。
顔を赤くしたまま、ふんっと鼻息をあらくして家の中へと入って行く。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!