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第15話

2.騒がしい入学式-8
2,364
2018/09/26 01:15
さらにマズくなったこの状況。

隼介にまでこの姿を見られたらどうしよう! と頭の中ははげしくパニックだ。
私が首だけを左に向けたり右に向けたりしてあわてていると、シャッとカーテンが引かれる音がする。
視線を戻すと、涼真が立ち上がって濃紺色のカーテンを全面に引いてくれていた。
城崎 杏
城崎 杏
あっ……
隼介に見せないようにカーテンを引いてくれたんだ……と思うと、体の力が抜けて安心感でいっぱいになる。
涼真のことだから、笑いのネタに隼介に見せるかも……とか思っていたのに。
いちおう、気をつかってくれたんだ、と思うと、ホッとして半分涙目にもなった。
心の中で感謝をしていたら、涼真がカーテンを少しだけ開けて私の部屋の方を見る。
そして、さっきと同じような見くだした顔で私を見て鼻で笑い、それから勢いよくカーテンを閉めた。
城崎 杏
城崎 杏
や、や、やっぱり感じ悪いヤツ……!!
感謝の気持ちがめばえ始めたけれど、今の涼真の表情を見たら、そんなもの一瞬でふき飛んだ。
城崎 杏
城崎 杏
絶対に仲良くなんかならないから……!
目の前にある濃紺色のカーテンをにらみ、私は低い声でひとり言をつぶやく。

カーテンには二人分の影が映っていて、仲がいい兄弟のしゃべり声が聞こえてくる。
きっとゲームの攻略法で盛り上がっているのだろう。
たんたんとしゃべる涼真の声と、それにリアクション大きく感動した隼介の声が聞こえてくる。
城崎 杏
城崎 杏
本当、仲がいいな……
昨日、今日と一緒にいて、それは心からうらやましく感じたことだった。
引っ越して来たとなりの家の家族は、イケメンで、仲が良くて、性格も正反対の男兄弟。
きっとほかの女の子たちからすれば、夢のようなできごとなのだろう。
それでも今までいなかったおとなりさんの存在ができたことは、私の中で大きなできごとだ。
城崎 杏
城崎 杏
明日から……いや、今から服装だけは気を付けよう……!
だって、おとなりさんは年が近い男子なんだ。
いつまた見られるかわかったもんじゃない。
そう決意し、私も自分の部屋のカーテンを閉めた。

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