しばらくすると、競技かるたが話題になった。
その影響もあってか、私もやりたくなり、
先生に相談した。
先生は放課後なら、教えてあげられると答えた。
ルールを一通り教えてもらい、先生と対戦形式でやることに。
「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり」
少し緊張する。
息を大きく吸い、吐く、そしてもう一度吸う。
よし、準備は出来てる。
「今を春べと 咲くやこの花
今を春べと 咲くやこの花」
来い。
「む」
さっき教わった、1字決まりだ。
先生の陣(敵陣)右下段1番端にあったので
そこを目掛けて手を伸ばす。
周りがスローモーションに見える。
気づいたら、私は「む」の札をけっこう勢い良く払っていた。
やった!取れた!初めての1枚だ!
興奮したのも束の間。
体ごと持っていかれて、
そのまま顔面から畳に着地した。
あの後、他の札もたくさん取れた。
取る度に顔面から転んだけど。
「いたい…」
額と鼻先を擦りながら言う。
でも、楽しかった。
またやりたいな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。