第6話

一人でもいてくれたら...
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2018/11/22 01:00

あの時から、私はずっと裕乃を避け続けている。

授業中は裕乃と逆の方を向き、話しかけていないし、話しかけられたら最低限のことしか答えないようにしている。

心臓のあたりがズキズキとして、泣きそうになっちゃうけどね...

いつまで続ければいいんだろう...もう、嫌だなぁ...。


そんなある日のこと...





柚香 「あなた!!」





お昼休憩のときに柚香が走ってきた。





あなた 「...なに?」


柚香 「裕乃くんが...!!」


あなた 「ひ、裕乃のことなんてもう知らないから...」


柚香 「あなたは、裕乃くんが女の子と仲良くしてても嫌じゃないの?」


あなた 「え、女の子と...?」





裕乃が他の女の子と仲良くするなんて、嫌だな...。

いや、でも私には関係ないし...やっぱりちょっと見ようかな?
ほんとに女の子と...?


不安と少しの興味で廊下をちらっと覗く。

...あ、見なきゃよかった...。





女子 「ねえ裕乃くん。今日暇?」


裕乃 「別に用事はないかな」


女子 「じゃあ、カラオケ行こ?」


女子 「そうだよ!行こー?」





...悲しいもんだなぁ、意外と...





柚香 「...大丈夫?」


あなた 「だ、大丈夫...だよ?」


柚香 「嘘、なんでそんなに悲しそうな顔してんの。」


あなた 「...だって、好きなんだもん。」


柚香 「...辛いね」


あなた 「いつか、また話せるかな...?」


柚香 「私が守ってあげるから、戦ってみなよ。」


あなた 「駄目。柚香に迷惑かけたくないの...」


柚香 「くよくよ悩まれる方が迷惑だよ?」


あなた 「...ゆず、か」


柚香 「当たってみないと!ね?」


あなた 「考えてみる...」





結局、裕乃は女の子達と行っちゃうのかな...?
やっぱり私のことをからかってただけだった?

裕乃も、他の男子と一緒なのかな...









柚香 「あなたー、帰ろー」


あなた 「...うん」


柚香 「...あ、ねえ!」


あなた 「ん?」


柚香 「裕乃くん、連れてかれちゃうよ...?!」


あなた 「...もう、いいよ...」


柚香 「ダメ!!」


あなた 「!?」


柚香 「そんな簡単に諦めないでよ!裕乃くんの事は信じたいんでしょ?特別な人なんでしょ!?」


あなた 「柚香...」


柚香 「真っ直ぐ戦ってよ!ファンなんかに負けないでよ!」





裕乃を避け続けて二週間が経つかな...?
私にとっては、一年以上経った気がした二週間だった。


...ほんとにこのままでいいのかな...?
って何度思ったことか...

でも、彩音ちゃんとか、美羽ちゃんとか、朔ちゃんとか...他のファンの女の子も全てが敵になってしまう。
...怖い。証拠だってあるっぽいし...





柚香 「好きなんでしょ?裕乃くんの事が」


あなた 「...好きだよ」


柚香 「じゃあ頑張ってよ!あなたには私がいるでしょ!?」


あなた 「柚香...」


柚香 「真っ直ぐに裕乃くんの事想わないと、私が許さないからね!?」





...そうだ。私、大切なこと知らなかった。

一人だっていい。私には大事な大事な親友がいるじゃん。

安心して、涙が浮かんでくる。
...まだ泣いちゃだめ。裕乃と話すまでは...





あなた 「柚香、行ってきてもいい?」


柚香 「...あたりまえでしょ!」


あなた 「...待っててくれる?」


柚香 「失敗したら慰めてあげる。」


あなた 「ふふっ...いってきます!」


柚香 「いってらっしゃい!!」





前を向いたら、足が勝手に前に進んでた。

下駄箱にいる?...もしかしたらカラオケ行っちゃったかも...
いや!裕乃は違う。信じてるから..!!





下駄箱について、裕乃の番号に目を向けるけど...まだ靴が残ってた。





あなた 「...まだ、学校にいる...?」





ほら、やっぱり行ってないじゃんあいつ。
...なんとなく居るところが分かる気がした。









ガラッ...!!





あなた 「...!」


裕乃 「!?」





着いたのは、私達の教室。

...教室のドアを開けると目が合った。

あ、久しぶりに目を見たな...。
やっぱり優しい目をしてる。...裕乃だ。





裕乃 「あなた...」


あなた 「裕乃...」





頑張れ、私。
言わないと...言わなきゃ...!!





裕乃 「なに?」


あなた 「あ、の...えっと...」


裕乃 「...俺、もう行くけど」





あぁ!!だめ...!!!





あなた 「す、鈴木裕乃さん!!!」


裕乃 「...?なんだよ、急に...」


あなた 「ごめんなさい!!」


裕乃 「は?」


あなた 「私の話...聞いてくれますか?」














裕乃 「...なるほどね?」


あなた 「......」


裕乃 「だから、なんで俺に助けてって言わないの?」


あなた 「だって...私が我慢すれば皆幸せになるのかなって思ったし...正直、一人ぼっちは嫌だったの」


裕乃 「...」


あなた 「でもね?柚香が背中を押してくれて...私ね、一人でも大事な親友がいてくれるならそれでいいって思えたの。」


裕乃 「なんか、あなたらしい。」


あなた 「それで...私は裕乃と話したいって思ったんだけど...裕乃はもう、私の事最低野郎って思ってるよね?」


裕乃 「そんなこと思ってないよ。馬鹿だなぁw」


あなた 「...はぁ?」


裕乃 「もちろん、すーっごく寂しかったよ?」


あなた 「...」


裕乃 「でも、あなたってなんやかんや俺と話してくれる人だから、なんかあったんだろうとは思ってた。...だから、待ってたよ。話しかけてくれるの」


あなた 「...!!」





ほんとに、ずるいよこの人。
...なんでそうやって優しい顔で、優しい声で言うの...きゅんって胸が鳴った。

それと同時に一気に涙がきましたけど!!?





あなた 「ねえ、裕乃..」


裕乃 「ん?」


あなた 「...泣いてもいい?」


裕乃 「こっちおいで。」





目の前には、両手を広げている裕乃。
...ちょっと近づいて下を向く。





あなた 「...っ、」


裕乃 「ほんとに可愛いな、あなたは。」


あなた 「バカに、しないで...!」


裕乃 「してねぇよw...ほら、もう大丈夫だからな。」





私、泣いてばっかりだな...。
本当に恥ずかしいや...でも、まあ裕乃だからいっか。

子どもをあやすようにトントンと背中を優しく叩いてくれている。
...もう、涙止まんないや。





あなた 「ひ、ろの...」


裕乃 「ん?」


あなた 「...た、すけ、て...くれ、る?」


裕乃 「うん。守らせてな?」


あなた 「あ、りが、と..!」





上手く話せないけど、伝わったみたい。

...あー、やっぱり好きだなぁ。大好き。









明日、ちゃんと彩音ちゃん達に言おう。










やっぱり、裕乃は今までの男子より特別で...違う存在なんです。

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