「りゅーき!」
キーンコーンカーンコーンと鐘がなり、
授業が終わって実に5秒後。
いつものように悠太が俺を呼ぶ声が聞こえる。
これは決して妄想などではない。現実だ。
悠太は隣のクラスで、
授業が終わると毎回俺にかまいにくる。
俺はなんて幸せ者なんだろう。
そう悠太が来るたび思う。
計算すると、毎日6時間授業なので、
毎日最低6回は幸せを感じている事になる。
俺は次の授業の準備を整え、
そしてニヤけそうな口元も整え、
悠太の元へ向かった。
悠太の前での俺は、結構格好つけてると思う。
だから、悠太に突然抱きつかれたりしたときも、
「なんだよ」みたいな感じで冷たく返してしまう。
本当は理性を保つのに精一杯なのだけれど。
「なぁなぁ龍輝!聞いてる?」
そんな事を考えてたら、悠太が俺の顔の前で
少し拗ねたような表情をして立っていた。
「えっ?あーごめん聞いてなかった。なに?」
おい不意打ちすぎるだろ!!
心のなかでは叫びながらも、
顔には出さず冷静さを保った。
「もー、だからー!次の土日泊まりに行ってもいいかって!」
「あっうん。………………ん?」
「親がどっちも仕事で、月曜日まで帰ってこないんだよ。」
「……………………」
……まじかよ。
悠太が泊まりにきたことはあるがそれは2年前だ。
悠太を好きだと気づいてしまった今、
その時とは訳が違う。
「え、まじで?」
聞き間違いではないかと念のため
もう一回聞き返してみた。
「うん。ダメ?」
……うんって言った……よな…?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!