_慎也Ver.__
とうとう冬は終わり…春が来た。
暖かくなるのはいいけど…
春になるってことは卒業がある。
卒業すれば…莉沙と会える時間が減る
けどそんなの、覚悟した上で付き合った。
それは莉沙も同じはず…
卒業が近づいてきても、会話はいつも通り。
俺も莉沙も。
卒業のことをまだ口にしたことがない。
卒業しちゃうね、とか。
寂しくなるね、とか。
卒業しても一緒だよ、とか。
全然言わない。話さない。
それを言うなんて、俺らしくない。
それは莉沙もきっと分かってる。
やりたいことが見つからなすぎて
困ってるよ…
なんでこんなにも見つからないのか。
好きなことはあるはずなのに
それを仕事で使いたいとかは思わない。
新しいことをやりたいのかな?
そうだとしても無防備すぎると思って
諦める。
その繰り返し…
…君以外の女の子と付き合うなんて考えられない。
君が一番だから付き合ったんだから…。
_莉沙Ver.__
とうとう春が来てしまった。
寂しい、嫌だ、行かないで欲しい。
そい思っても口にはしない…
けど、
これからどうするか、とか
将来を聞くことでその気持ちを紛らわそうとする。
こんなことを言うなんて、
私らしくないのかな。
こんなにムキになって…
…そう言えば私も慎也くんに言ってたな…
慎也さんからのお返し。
いろいろともらってきた。
慎也くんが卒業…
そんなの、考えたくなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。