連続の告白失敗に、さすがの私も二日ほど落ち込んだ。
だが、舐めないでもらいたい。
日曜日をむかえた私は、ふたたびやる気に満ちていた。
なにせ文化祭は三週間後にせまっている。
それなら、たとえ0・0000001%くらいであってもつきあえる可能性に賭けてみたい。
覚悟を決めて、私は祐生の家をおとずれる。
呼び鈴を鳴らして名前を名乗ると、すぐに祐生があらわれた。
緊張よりも、今はあせりが先に立つ。
「めずらしいね」なんて言って、やわらかく笑う祐生のまえに立ち、呼びかける。
びこん、びこん、びこん!
【晴れ】【大雨】【雷】【雪】【くもり】/【危険・三角関係警報発令中!】
背筋に悪寒が走る。
直後。
空からハトのフンが落ちてきて。
びしゃり。
私の肩が、汚された。
あまりのできごとに私はパニックになってしまい、祐生があわてて私のカーディガンを脱がせてくれる。だけど、もう、なにも考えられなくて。
泣きたくなった。むしろすこし泣いてしまった。
さすがに、告白なんてできる余裕はゼロ。
というか今日だけは絶対にしたくない! ハトのフンくっつけて告白なんて最悪でしょ!?
……私の告白は、今日も失敗した。
それでもあきらめなかった私は、かなりがんばったと思う。
決意とともに何度も挑戦した。
途中からは、どきどきする気持ちとか恥じらいなんて考える余裕もないくらいだった。
だけど挑戦するたびに、あのいまいましいブザーがびこん、びこんと鳴りだして。
時には、足にけがをした猫が降ってきて。
時には、教壇でつまずいた先生の財布から小銭が降ってきて。
時には、窓の開いた音楽室から楽譜が風にのって降ってきて。
毎回ちょっとした騒ぎになってしまい、あたりまえに告白なんてできる余裕はゼロ。
…………私の告白は、みごとにどれも空回りして失敗しつづけている…………。
昼休み、いつもの図書館受付で、私はぐったりとカウンターに頭を預けていた。
この数日間、がんばりすぎて心が折れそうになっている。
話を聞いてくれていた春奈が、難しそうに眉を寄せた。
春奈の顔は真剣だ。私をからかっているとは思えない。
思い当たることは、たしかにある。
祐生に告白しようとしたときに限って出てくる〝恋愛警報〟だ。
例の警報が解除されないかぎり、祐生には告白できない仕組みになっている可能性がある。
ほかに原因なんて考えられないのだから。
たとえば大雨警報なら、雨雲が消えるのを待つように。
たとえば暴風警報なら、風が弱まるのを待つように。
心に決めて、私はこぶしをにぎりしめた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。