第4話

Chapter.3
102
2018/12/07 23:53
    月曜日の朝。花は重い足取りで家を出る支度をしていた。罅の入った鏡の前で髪の毛を括り、制服の皺を整える。
行きたくないなあ……
    小さく、呟く。休めるものなら休みたい。今日は何をされるのだろうか。
……よし
    祖母の仏壇に手を合わせる。
――――行ってきます







学校に着くと、いつものように周りからクスクスと笑い声が聞こえた。花が虐められていることは何となく知られているようで、他クラスにも花に話しかける人はいない。
しかし、問題が起こったのは昼休みだった。
比奈
ねえ花ー。トイレ行こー
美礼
早く早くー。お昼終わっちゃうからー
    二人に呼ばれ、花はゆらりと立ち上がる。午前中は何もなかったので、完全に油断していた。






比奈
ほら、脱げよ
    床に押し倒された花は比奈を見上げた。その傍らで、美礼はスマホを構えている。
え?
え、どういう……
    状況が飲み込めない花の前に、比奈がしゃがみこむ。
比奈
あんたさあ、"援交"やってるんだってぇ?
はあ?
    思わず素っ頓狂な声が出た。
比奈
あんたの裸姿、好評になっちゃってさあ。だから、追加でお願い
    比奈はニヤリと笑う。自分のスマホを操作し、花の前に掲げて見せた。そこには、見覚えのある家が写った写真が表示されている。いや、見覚えも何も、紛れもなく正臣の家だ。
比奈
ほら、ここ見てよ
    比奈が、写真の中に写っている窓の所を指差す。その窓は風呂場の窓だった。画質が悪いのでよく見えないが、人の裸体のようだ。
比奈
コメントで褒められてるじゃん〜。良かったね〜
    画面をスワイプしながら比奈が嗤った。花が黙ったまま微動だにせずにいると、比奈が花の胸ぐらを掴んだ。
比奈
あのねー、一応気を遣って、女子トイレまで連れてきてあげたんだよ?それともさ……
    花にしか聴こえない声で、比奈が囁いた。
比奈
脱がせてもらいたいのかなぁ?
いやっ、やめて……!!
    制服のリボンに手をかけた比奈に、花は必死に抵抗する。その時、いつの間にか姿が見えなくなっていた美礼がトイレに駆け込んできた。
美礼
ひーちゃん!!先生来そう!あと、時間が…………
    焦った声の美礼に、比奈は舌打ちをした。
比奈
ふん、今回は見逃してやるよ
    捨て台詞を残し、美礼を連れて比奈はトイレを出ていく。後には呆然とした花が一人、取り残された。
正臣さん……どうしよう…………

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