〜隆弘side〜
俺が頭の中を整理しているうちに、その楽しそうな話し声は近づいてくる。
2人がスタッフさんたちに挨拶をして、俺たちの元へきた。
そしてあなたは俺を見つけると笑顔で
と言う。
俺はあなたと目も合わせずに、思わずトイレに向かって走った。
俺はトイレに着くと肩で息をし、鏡に映る自分の顔を見る。
そんなことを思いながら、鏡に背を向けようとすると、鏡の端に真司郎が映った。
真司郎は俺を見て、ちょっと目を泳がせた後、小さい声で
と、苦笑いをした。
そう思うと恥ずかしくなって、段々顔が赤くなっていく。
「ちょっと行ってくる」と真司郎の横を通り過ぎかけた時、真司郎に「ちょっと待って」と言われ足を止める。
自分でも驚いたけど、真司郎があなたを好きだと知っても、あまり驚かなかった。
この前、あなたの肩を抱いて店から出て行く真司郎の顔を見た。
その時にはもう気づいていたのかもしれない。
真司郎は、あなたに恋していると。
俺は精一杯の笑顔で
真司郎と、お互い曇りのない笑顔で笑い合う。
與は俺のライバルであり、俺の大切な仲間だ。
申し訳ない気持ちになり、俺は真司郎に頭をさげようとした…けど、あることに気がついた。
これは、ライバルとして、そして大切な仲間として、伝えないといけなかったのではないかと思った。
バッドタイミング…
俺は「行こう」と真司郎に声をかけて、「早くこいって」という秀太の背中を追いかけた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。