第12話

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2018/11/05 14:36


おつかれ様、という言葉が部室から聞こえだした頃、私は斗真を思い出してため息をついた。
行かなければいけない。
どんな顔で行こう…
そんなことを思ってカバンを背負っていると、後ろから気だるげな声がした。
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
邪魔。どけ。
山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
あ、ごめん。
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
今日、帰んの早いじゃん。
なんかあんのか?
山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
ん、まあね。
ふうん、と息をついてから、
滝沢は齋藤に手を振った。

そのまま帰るのかと思ったけど、私の前にいたままだったから、声をかけてしまった。

山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
ソロ、家でやってたんだね。
うまかったじゃん…?
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
そうか?さんきゅー。


ただ一言二言話しただけなのに、部室はいつもの賑わいをなくしていた。
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
もう、最後なんだよな。
山崎との縁はバッサリ、だな。
バッサリ、そう言って笑った。
その笑顔さえも眩しく見えてしまうから、虚しくて、悲しくなった。
山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
そう、だね。
なんか、あっという間だったなあ…
滝沢から視線を外したとき、
私の肩に手のひらがのった。

驚いて振り向くと、斗真がいた。
息を切らしていた。
赤坂 斗真(あかさかとうま)
赤坂 斗真(あかさかとうま)
よかった。まだ帰ってなくて。
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
滝沢 蒼弥(たきざわそうや)
よ、斗真。なんかあったか?


斗真は滝沢の質問には答えず、私を見た。
なにしてんの…
と、口だけで訴えてきた。



やっぱ、気づいてるなあ、斗真。
私が滝沢を好きだって。

斗真の表情に少しだけ恐怖心を持った私は
滝沢に目を移した。
赤坂 斗真(あかさかとうま)
赤坂 斗真(あかさかとうま)
帰るぞ!
山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
えっ、ちょっ…!


強く腕をひかれたかと思えば、そのまま斗真は走り出した。
掴まれた右腕と、滝沢の声が聞こえた耳がズキンと痛かった。
山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
とうま!痛いって…
赤坂 斗真(あかさかとうま)
赤坂 斗真(あかさかとうま)
あ、わり…

今にも泣きだしそうな目で謝られた。
なんでこんなことをするのか、私にはわからない。
初めて、斗真のことを理解できないと感じた。
山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
なんで…
なんで、こんなこと…

目に涙が浮かんでしまった。
袖で涙を拭ったら、拭いきれなかったのか、
まだ瞼には涙の感覚が残っていた。
赤坂 斗真(あかさかとうま)
赤坂 斗真(あかさかとうま)
ごめん…俺、山崎のこと傷つける
つもりは…
山崎 佳寿(やまざきかず)
山崎 佳寿(やまざきかず)
わかってるよ。
わかってるから…
どうしても斗真の顔を見られなかったから
そのまま先を歩き始めた。
斗真は何も言わないで私の後ろを歩いた。


きっと、俯いていただろう。

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