第26話

ペン
116
2018/09/29 01:06
テーブル以外には、よく見ても何も無かった。
















新品のようにホコリも汚れも無くなっていた。












響が亡くなった後、誰かがこの部屋に入って掃除をした。














それは確定だ。












何故、そんな事をしたのか。














きっと、決定的な何かがあったのだろうな。













この部屋に入れたのは家族しか居ない。












疑いたくないけど、疑ってしまう。
















私が部屋から出ようとした時、"未優"と呼び止められた気がした。














同時に私は響に手を握れられているような気がした。












響は私を呼び止めるとき、よく手を握ってくるのだ。



















響が居るはずないと分かっているけど、後ろに響の気配を感じた。













思わず、私は振り返ってしまった。










もうここには響は居ないのか。








いくら待ってても、帰ってくることは無い。









その時、響の気配は消えてしまった。












ただ、右手の温もりは消えていなかった。












その時、私の瞳にあるものが映った。













机の下に小さな袋があった。














私はその袋を手に取ると、すぐに中身を確認した。














袋の中身は二つのペンだった。











それと、小さな紙が入っていた。











紙には何か書かれていた。










「未優、最後のプレゼントだ!そのペンは俺とお揃いなんだから大事に使えよ?」と書かれていた。



















ペンにはそれぞれ、私のイミシャルと響のイミシャルが刻まれていた。











私はそのペンを抱きしめた。












こんな分かりづらい所に隠したのは、私以外に見つからないようにする為なの?















私だって、見つけられずに部屋を出ようとしたのに。














これが最後のプレゼントなんて嫌だよ…。


















もっと、一緒に居たかったよ…。




















もっと、もっと……。

















その時、目尻が熱くなった。















そして、透明なものが頬を伝って止まらなかった。


































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