私はカバンを保健室に置いたまま、走って学校から飛び出した。
飛び出したものの、どこに行くかは決まってない。
でも、どこでもいい。
誰も居ない所なら…どこでも。
家に帰っても、どう接したらいいか分からない。
だって、私が本当の母親と父親だと思っていた人は本当は違くて、兄弟が居ることも私は忘れてて、奏の事までも忘れてて、私は最低だ…。
自分が許せない。
その時、私は何かにぶつかり立ち止まった。
その時の目の前の光景に驚いた。
広く、ギラギラと輝いてる海が目に映ったのだ。
海に私は「こっちに来れば怖くない、おいで」と呼ばれているように感じた。
このまま、飛び込んでしまえば、もう楽になるだろうか?
本当の家族に会えるだろうか?
あー、そうだ。
私が居なくなれば響も元通りになる。
私は柵に座った。
でも勇気が出ず、それから前に進めない。
その時…!!
『未優!!』
響が私を追いかけてきていた。
私は柵から降りずに言った。
『しばらく距離を置こう。違う…。響、ずっと距離を置こう。私のせいで響がそうなったのなら、私は責任をとらないとだよね…。ごめんね…響』
ずっと一緒に居たんだ。
恨みたくても、恨めないよ。
私が決意し、柵から手を離した時……!!
響が私の手首を掴んだ。
でも、持ち上げて私を助けようとはしない。
響は私に言ってきた。
『ごめん。未優のせいじゃない。俺が悪かった。俺は自分の為にやっていた。でも、俺は未優の為だと言い訳をし、逃げていた。未優、許してとは言わない。死のうとするのを止めたりしない。未優が止めて欲しく無いのなら。でも、その前に聞いてくれ。全ての真相を。』
そう言い、響は私を引き上げた。
『やっと、話してくれるんだ。もちろん聞くよ。とりあえず、あそこのカフェに入ろうか』
『そうだな』
そうして、近くのカフェに入った。
注文を終え、席に座ったその直後に響は話し出した。
私はそれを真剣に聞いた。
『まずは、連続強盗事件についてだ。連続強盗事件、その犯人が捕まってないことを知り、俺は考えた。今、未優の家族を殺しても、連続強盗事件と勘違いされるとな。俺は、その犯人を捕らえて首吊りをし、自殺に見せかけた。その間に未優の家に侵入して、未優の家族を全員殺した。邪魔だったから。本当にごめん。俺は、未優と関わっているやつが羨ましかったんだ。こんなのただの言い訳になってしまうけど。そして、その後は奏も殺した。自殺に見せかけてな。それと、響が死んだと思わせて。そして、先生から死んだと発表されたやつも全員俺が…殺した』
私はそれを聞いた途端、許せなかった。
自分が…。
結局は、私のせいで皆、死んだという事になる。
私のせいで、大勢の人が死んだ。
殺したのは私じゃなくても、原因は私ということに変わりはない。
なら、もうこうするしか無い…。
私は響に向かって言った。
『そうだったんだ。話してくれてありがとう。でも、やっぱりさ、私達は距離を置いた方がいいみたいだね…。だから、じゃあね!響!』
私は無理矢理笑顔を作った。
そして、カフェを出ていった。
それから三日後。
私は転校した。
それと、一人暮らしを始めた。
思い出したことは言わなかった。
真犯人についても私の中だけに留めておくことにした。
そして、今日は転校する学校へ初めて行く日だ。
つまり、初登校ということだ。
今度こそは、もう失敗しない。
絶対に…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。