【ストーカー】
永見×浜田
〈浜田side〉
俺の荒くなる吐息が、暗い夜に飲み込まれる。
PM11:00、今日は帰りが遅くなった。
周りには誰もおらん。俺一人。
静かな暗闇の中、俺の靴音と何かが響く。
──俺以外の誰かの靴音。
誰も辺りにおらんことを確認して駅を後にしたはず。
今日は、同期との飲み会があって、終電で帰ってきた。駅から家まで少し離れてるから、少し歩いていつも帰ってる。
……ここ最近、ずっとや。
俺の後ろで靴音がする。それも、俺と同じスピードで靴音がする。まるで俺に合わせてるみたいや。
──コツ、コツ……
──コツ、コツ……
──コツコツ
──コツコツ
──コッコッ……
──コッコッ……
必ずこの足音は俺についてくる。そして……
浜田「……またか。」
俺の家の前で止まる。
浜田「……もう…なんやねん……」
毎日毎日、焦りと恐怖に追われる日々。
次第に、俺は不眠になりやつれていった。
浜田「はぁ……」
原田「にゅーんたんっ!」
浜田「……あ、どうも。」
原田「うわ、話には聞いてたけどほんまにげっそりしてるやん、大丈夫か?」
浜田「はは…はぁ。」
原田「なんか、あったんか?あったからそうなってるんやろうけど…大丈夫か?」
浜田「だ、大丈夫……っす、」
原田「……しんどくなったり耐えれんくなったらいつでも言えよ?」
浜田「ありがとうございます。」
──相談、すれば良かったかな。
結局、つきまとわれてるかもしれへんことは誰にも言えてへんままや。さすがに俺の精神も限界が近づいて来とる。
浜田「誰か……助けてや……」
──ギィ……
待機室の扉が開いた。
永見「……浜田?」
浜田「…永見……」
永見「ちょっと、顔見ようと思ってさ。最近ほんまにやつれてるけど大丈夫なん?」
浜田「……大丈夫や。心配せんとってくれ。」
あぁ……また嘘をつく。
永見「大丈夫なわけないやん。そんなに痩せてやつれて、心配せんわけがないやろ?」
永見「僕のたった1人の大切な相方なんやで。お前があかんくなったら、カベポスターは終わるんや。僕は、浜田と2人で頑張っていきたいんや。」
あぁ……こいつ、ほんまええやつやな。
浜田「……永見……」
自然と、目から涙が出てくる。あかん、止まらへん。
永見「しんどかったんやな、ごめん、気づいてあげれへんくって。」
浜田「……大丈夫、ありがとうな。」
永見「これからは、なんでも言ってや。浜田を困らすようなやつ、許せんから。」
浜田「ホンマに、ありがとうな。」
気づかんかった。こんなにも身近に、俺の事をここまで思ってくれてるやつがおったやなんて。
……永見と出会えて、ほんまに良かったと思った。
俺の横をすぎた永見からは、優しい花のような香りがした。
またこの時間が来た。一緒に帰ろうと永見が誘ってくれたけど、申し訳なくて断った。
浜田「よし、頑張れ、俺。」
駅のホームを曲がった後、俺は一目散に走り出した。
寒い夜に白い息が吹きかかる。
胸が苦しい、普段動いてへんかった罰や。
こんなんなるんやったら運動しとくんやった。
しんどい中、後ろから聞こえる靴音からどんどん遠ざかって行くのがわかった。
そして、ようやく家に着いた。
浜田「……はぁっはぁっ、よっしゃ。俺の勝ちや。」
今日は何もなかった。明日からもこの作戦で行こう。
???「……チッ、」
浜田「何、コレ……」
朝、家のポストには、楽屋や家の中で俺の盗撮写真と、犯人の心を映し出したかのように見事に咲いた黒バラが入っていた。
そして、メッセージが、扉に書かれていた。
〝逃げるな。ずっとお前を見続けているからな。〟
あかん……これは……あかんわ。
俺、どうなってまうんやろう。
浜田「はは……もう、しんどいわ。」
俺は、家の前で泣き崩れた。
今日は休みを貰った。マンゲキメンバーに心配かけてしまったらしく申し訳ない気持ちでいっぱいや。
家のベットで1人、布団にくるまる。
もう、何をしていいのか全く分からへん。
このまま、俺は壊れていくんやろうか。
心の中に不安が募るばかり。
そんなことを思う中、ふと、思い浮かんだ。
──永見に会いたい。
永見……永見……俺をわかってくれた永見なら、もしかしたら話せるかもしれん。この状況を変えてくれるかもしれん。そう、思った。
浜田「迷惑やろなぁ……」
このことを伝えるか悩んだ。
その時、
──ピコンっ
〝浜田、大丈夫?お見舞いにいく。〟
永見からの連絡が入った。
安心と、嬉しさで、涙が止まらへん。
なんでこいつは、いつも俺の思ってることがこんなにわかるんや。
浜田「永見……」
永見に対する感謝の気持ちがいっぱいになった。
永見「浜田!大丈夫!?」
インターホン越しに聞こえる永見の声。
永見「なんやこのメッセージ……誰やっ、クソっ……」
そうや、書いてあるやつ、消すの忘れてた。
永見「しんどかったやろ?もう大丈夫や。とりあえず、お前の家に入れてや、そこから話聞かせて。」
俺は、鍵を開けようとした。
その時、たくさんの記憶が遡ってきた。
まるで、永見を拒むかのように、俺の記憶が走馬灯のように溢れ出してくる。頭が痛い。
──あれ?俺、永見に人絡みでしんどいなんて一言も言うてへんぞ。
待機室で言われた一言を思い出した。あいつ、確かに知った口調で話してた。
浜田「……あかん、これ、絶対あかんやつや、」
俺は、鍵開けかけた鍵を急いで閉めた。
永見「浜田?浜田、開けてや、浜田。」
永見「なぁ、開けて、開けてや!浜田!」
永見「開けろよ!おい!入れてや!浜田!」
永見の声が段々と大きくなる。
分かった、全部が繋がった。
こいつ、俺のストーカーや。
──ガチャっ
──ギィィ……
俺の家の鍵が壊された。
ゆっくりと扉が開く。俺は、金縛りにあったかのように固まって動けへん。
全てを理解した今、俺は恐怖で何も出来ひん。
永見のジャケットには、バラの棘らしきものが刺さっている。
永見が不気味な笑みを浮かべて言う。
「ずっとずっと、見てたんだ。もう、逃がさへんよ。」
その言葉を聞くと同時に、俺の目の前は真っ暗になった。
作者:めちゃくちゃ好きなんですよ、こういうオチ。駄作ですみません。もし、続きがあったら読みたいという方がおられましたら、続き書こうと思います。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。