カビだらけのソファに横になって、無気力に天井を見つめる
残念なことに、未だ両親は健在で
ゴミまみれの部屋で酒に溺れたまま、廊下に突っ伏して寝ている。
人間かも怪しく思えるほど滑稽な姿だ。
こうならなかった両親は逆に居なかった。
これもまた、見慣れた景色の一つでしかなく
生きている必要性を感じるなんて、誰が考えるだろうか?と
問うてみたいくらいだ…
テーブルに手を伸ばしてタバコを探す
ソレを口にくわえると、掌をかざして火を付ける。
この世界に、特別な力は存在しない。
幽霊だの、宇宙だの、神だの、妖怪だのの話は聞くし
超能力と呼ばれるものもあるらしい
ヒーラーと呼ばれる存在がいるとか、いないとか
だが、掌から小さな火を出したりはしないだろう。
あなたには、当たり前に出来てしまう
輪廻転生を繰り返すこと、そして、それで身についた力
ソレはある程度なら、どの世界でも使えると言うこと
気づいたのは何百年前だが
要は、似たような環境なら
別の世界の能力も使えることになる。
気づいた時は、呆気に取られたと同時にガッカリもしたし
今まで以上にチートを発揮してしまい
逆に気疲れが多くて、それはそれで面倒でしかなかった…
似ているが、全く異なる力を使う
それは、多分タブー…
普通に考えれば、そんな事するやついない。
違いを把握しないまま、力を使ってしまった場合
規格外なものが多すぎて目をつけられるから
魔女狩り、解剖、実験体、監禁、晒し首
ま、死が早まるだけのことなのだが…
最近、急な眠気に何度か襲われるようになった…
「夢」と呼んでいいのか分からないが
黒い馬は、日に日に近くまでやってくる。
その姿を…何度見ても
…足がすくむ…
この夢を見るようになってから
記憶を手当たり次第、探してみたが
これと言ってピンとくるものを、まだ見つけれてはいない。
大抵の「死」は体験したと思う。
それでも、こんなに強烈な寒気に襲われるのだから
「思い出したく」もない「何か」があったに違いない…
背筋が凍るほど寒い
耳鳴りがうるさくてイラつく
吐き気さえある
黒い馬の鼻息が…
もうすぐ届きそうなところまで来ている。
「その時」は近いらしい。
何かあるか、何を意味するか
何が待ち構えているのか…
考えたくもない。
ただ、この気持ちの悪い感覚から逃げ出したくなる
そう、その時は…もう近い。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。