第30話

1,994
2020/04/22 03:45
あなた side


第1スタジオ。

大きな鏡の前でひとり、何度も何度も踊っている。
あなた

っ、はぁはぁはぁ、…

何曲も踊ったあと、

思わず床に手をついてしまった。

完璧を求めすぎてつい、

自分の限界を超えてまでも踊り続けてしまう。

それが昔からの癖。
床に寝転がり、

大きく息を吸ってみる。

今、この瞬間だけは、

何もかも、忘れられるんだ。
ツイッターで、“吉川あなた”と調べれば、

一番に出てくるのは誹謗中傷。

私のこと、よく書いてくれる人もいれば、

誹謗中傷は、それの何倍もある。

覚悟してたもん、それくらい。

HIROさんにも、

"EXILETRIBEの一員となった分、世間の声は何倍にも厳しくなる"

と、デビューする時に言われた。

それでもHIROさんは、

私をFANTASTICSのメンバーにしてくれた。
あなた

っ、…泣

"強くならないと"って思ってるけど、

どうすればいいのか、分からなくて。

涙ばかり出てしまう。
堀 夏 喜
何泣いてんの。
あなた

っ、…泣いてなんかないし。

堀 夏 喜
どこまで強がりなんだよ、笑
優しさに溢れた夏喜の顔を見たら、

もっと泣いてしまいそうな気がして。

ギュッと俯いた。
堀 夏 喜
……また抱え込んでるんでしょ。
あなた

……………。

堀 夏 喜
悩んでるなら言えよ、
あなた

っ、夏喜には関係ない!!

堀 夏 喜
………ごめん、余計なお世話だったわ。
バタン、とスタジオを出てった。

…こんな自分大っ嫌い。

素直になれない自分の苛立ちを夏喜にぶつけて。

夏喜は悪くないのに。
あなた

なんで、こうなっちゃうの…

夏喜が居なくなったスタジオの中でひとり、

ただただ後悔が募っていくばかりだった。

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