その後、谷森は辞職し、空いたその職にはなんと
楓が就くことになった。
なんでも、谷森がやったことは内密にではあるものの、
社長に伝わっており、異例の大抜擢として
楓が昇進することになったらしい。
楓は苦笑しながらそう言っていたけど、
私は素直に嬉しかった。
そして、壮馬とは、、、、
別れを切り出したあとすぐ、家を出た。
今まで払ってくれた分の家賃を置いて。
お互い、一言も話さなかった。
いや、私が話そうとしなかったからかな。
最後の最後まで、壮馬は引き止めてくれなかった。
家を出る直前、
と言われた。
いつか会おうという意味だろうか。
そんな気なんてないくせに。
また会いたいって気持ちがあるんなら、
なんで今引き止めないんだよ。
なんだか自分がすごく可哀想に思えてきて。
そんな自分が情けなくて。
今の状況になっているのは私のせいなのに。
私は言葉を返さずに、たくさんの思い出が詰まった
家をあとにした。
さようなら。
幸せな日々。
さようなら。
私の大好きな人。
もう、きっと会えないね。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。