ガチャン
持っていたお箸が音を立てて落ちた。
信じられなかった。
壮馬と、喧嘩してしまった。
今更仕事のことなんてどうでもよくなってしまった。
私の本音を受け入れてもくれない。
そんな反感がまだある一方で
壮馬に嫌われてしまったかもしれない。
その気持ちがどんどん強くなっていった。
勝手に仕事でストレス溜めて、勝手に壮馬に吐き出して、
思った通りの反応が返ってこないと、怒って、当たって。
一時の強い感情が消え去ると、もう後悔しか
感じなくなった。
何の解決にも繋がらない。
頭では、分かっているんだ。
なのに、なんで……!
壮馬だから、いいと思っていたのかもしれない。
ずっと、『推し』だったから。
私たちオタクにとっては『推し』はオタ活をする
対象でしかなくて、『1人の人間』としてみれて
いなかったのかもしれない。
恋人になってからも、ずっと。
自分がいい気持ちでいるための、道具。
壮馬の気持ちなんて、本気で考えたことが
あっただろうか。
本当は、ずっとずっと自己満だったんじゃないか。
壮馬はずっと自分を好きでいてくれるって
優しく接してくれる度に
とんだ勘違いをして、自惚れて。
壮馬はもう、私のことを好きじゃないのかもしれない。
怖くて仕方がない。
嫌われたくない。
これからは壮馬の気持ちも考える。
ちゃんと向き合う。
仕事のことだって、自分で解決する。
だから、どうか
私を嫌わないでください。
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。