第44話
最悪の想像
土曜日。
壮馬が、帰ってこない。
しかも、1日や2日ではない。
今日で、およそ5日目。
いくら生活リズムが違うとはいえ、5日も会ってない
というのは今回が初めてだ。
私の頭にある可能性が浮かぶ。
『浮気』
してたり………
先日の喧嘩のことが走馬灯のようによぎる。
あんなこと、言っちゃったから。
愛想、尽かされたんじゃないか。
そんなわけない。考えたくない。
壮馬に限って。ありえない。
すぐに振り払う。振り払おうとする。
だけど、1回その考えが頭をかすめると、
こびり付いたように離れない。
でも、それを調べる術を私は持っていなかった。
呼吸が荒くなる。
耳鳴りがする。
不安で仕方がない。
色んな感情が私の心で蠢く。
浮気なんて、そんなこと考えて、壮馬を100%
信じることが出来ない自分が嫌。
喧嘩したのに謝ることすらも出来ない自分が嫌。
勇気が無くて、逃げてる自分を直視してこなかった。
こんなことになるなんて思ってなかった。
言い訳ばっかり。
本当に好きだったら、浮気なんかされても
平気なんじゃないかって、彼氏でいてくれるだけで
いいって思えるのかな、とか思って。
私は本気で好きなのに。
大好きなのに。
壮馬との仲を戻せるなら何を投げ出したっていい。
それくらい、好きなのに。
好きだから、相手からも好きでいて欲しいんだ。
でも本当はそれも自己満なんじゃないかって。
自分がどうしたいのか、どうすればいいのか
分からなくなって、自己嫌悪は増すばかりで。
結局、その夜は一睡も出来なかった。
同じ考えだけが、頭の中をぐるぐると巡っていた。
壮馬は、帰ってこなかった。
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