第160話

10 年 前 に 拾 っ た 君 へ 。
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2021/06/25 09:05






一通りステージ上で語ったあと、




あの滅多に泣かへんしげが




ファンの前で声を上げて泣いた。

















ややこしいけど、あなたは死んでへん。





あの日、俺らがあなたと過ごす最後になるはずやった日。







確かにあなたの心臓はゆっくり止まりよって、



体の温もりもなくなっていった。






でも急に、かすかに小さな心臓の音がしげには聞こえたらしくて。








" っ、救急車っ、!!! "



" ... こいつ、、まだ生きとるかもしれへんっ、 "










そう言われた時、さすがやなって。






あなたって只者じゃないなって思ってん。



絶対に助からへんと言われていたあなたが、今も俺らの人生に存在しとる。
















せやけどな、












俺らのことは、綺麗さっぱり忘れてしまった。






後遺症が残って、脳にダメージがあって。


むちゃくちゃやろ??





あの日から、俺らが喋りかけても反応なし。

笑いもしてくれへん。









確かに、今の俺らの人生にあいつはおる。




けど、






昔のあなたは、どこか遠くに行ってしまったんや。










星になったんか、まだ雲の上におるんかは分からへん。




けど、昔のあなたはここにはおらへん。











" 来世でもパパたちに会いたい "



その言葉を残して



俺たちの背中を来世に押して



静かに消えてしまった。














ステージ上で泣きじゃくる相方。

しげの言葉を聞いて裏で泣いとる俺ら。










ほんまに、



しげの言葉って



人の心の中にドストライクに入ってくる



不思議な力をもっとる。












神 山
神 山
しげ、




たまらずしげに駆け寄り、


うずくまったままのこいつを強く抱きしめた。






神 山
神 山
、、、よぉ頑張った、しげ。
神 山
神 山
、、、おつかれ、しげ、、
重 岡
重 岡
っ、くっ、、、、





しげ以外の鼻をすする音が聞こえる。




あなた、ファンにも愛されてたんやな。















しげも辛いはずやのに


自分が言うって


率先してこの場に立ってくれた。














ありがとう、しげ。











ありがとう、俺らが拾った10年前のあなた。



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