いつも通りの日常?
あの時まではな。
... なぁ、何してんねん。
震える足をなんとか踏ん張りながら
震える声であなたの名前をそっと呼ぶ。
静かに俺の涙が頬につたった。
あなたが飛び降りた。
迎えに来てて、遅いなーとは思ってた。
でも今日は一緒に出掛ける予定やったから。
何買おうかなー、とか何しよー、とか
俺は完全に浮かれとったんや。
そしたら、視線に映るあなたの姿。
こういうとき不思議と何もかもがスローモーションに見えるんやな。
俺はあなたが落ちたであろう場所へゆっくりと踏み出した。
その場へついたとき、腰から力が抜けた。
震える声で叫び、あなたの体を揺さぶる。
今は血が苦手だ、嫌いだなんてどうでも良かった。
ただただあなたの応答を待っていた。
なぁ、目覚ましてくれるんやろ?
なぁ、声聞かしてくれるんやろ?
なぁ、また笑ってくれるんやろ?
俺のそんな願いは
この場で叶うはずがなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!