ライブは、無事に幕を閉じた。
それからお世話になった関係者さんに挨拶し回ってたら、家に帰る頃にはもう23時過ぎ。
荷物を置いて手を洗ったあと、
押し入れの中からある物を探した。
それは、俺らとあなたの今までの思い出が詰まった一つのアルバム。
あなたがちっこい頃から今まで。
全部の記録がここには載ってる。
ほんまに8人一つ一つの思い出が嬉しくて
こうやって大切に保管してたんよな。
どんな辛いことがあっても、
仕事で疲れ切ってたときも、
いつも癒してくれたのがあなたやった。
また出会えるよな。
昔のあなたに。
0時まであと数分。
49日という今日が終われば、
あいつの魂はこの世界からいなくなってしまう。
正直、あいつは死んでへんし、この世に存在しとる上でこんなことするのは気が引けたけど
きちんと昔のあなたにありがとうを伝えたかった。
区切りをつけたかったんや。
目を閉じて
あいつの顔を浮かべてみた。
自分でもびっくりするくらい笑顔のあなたしか出てこーへんくて。
23時59分。
8人の大切な思い出が入ったアルバムを抱きしめた。
... さよならは言いたくない。
あいつに伝えたい言葉は一つだけ。
小瀧がソファで眠っているあなたの頭を撫でた時、
時計の針が、静かに音を鳴らしながら右に動いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。