「無理だ、んな大金払いきれるわけがない」俺は、立ち直れないほど落ち込んでしまう。
が、そのとき。
藤ヶ谷の手が、優しく頬に触れ。
ギュッと抱きしめられた瞬間、キスして来てよ。
言うが否や、あの時と同じ服が脱がされて行き。
その手が、唇が身体中を這い。
(どうしてだよ、くっ)
でも、否応なく反応してしまう自分をどうする事もできず。
そう言った途端に藤ヶ谷の手が俺のを扱き始め。
「うわっ、ダメっ…だ」
(頼む…もう‥こんなこと…するのは…やめてくれ)
(いっ、意地悪…だな)
俺には、分からなかった。
優しい藤ヶ谷、俺を抱く藤ヶ谷。
どっちが本当のこいつなのか。
ヌチャ、ヌチャ!
(やだ、やだって、おかしくなっちまう)
グチュ、グチュ!
認めたくなくても押し寄せて来る快感に、俺は少しでも声を出すまいと必死で堪え。
「なっ、流され…る‥ダメっ…だ‥そしたらきっと」
自分は壊れてしまうのかもしれない。
(うっ、うわっ…あっ‥でっ…出ちまう‥ああ…あっ)
この時から、そんな恐怖観念に囚われるようになる
ズチャ、ズチャ!
「いっ、嫌だ見たくない」それは、回を重ねるごとに増して行き。
心が、押しつぶされそうになったとき事は起きてしまう。
まるで全ての想いを飲み込むかのように吹き荒れる嵐の如く、その身に降りかかり。
・藤ヶ谷side
その翌日、何故だか俺んちには人がわんさか集まって来ていて。
(だけど、どうしてコイツまでいるんだ?五関)
(もう、なっている)
(誰が会わせるって言った)
(ちょ待て、なんで知っているんだよ?ワタ)
(お前もってか別に、あいつは奥さんじゃねぇし)
(はっ?俺にそんな趣味はない彼奴と一緒にすんな)
(そうなの?)
(しかし俺の周りって、なんでこう)
(その気のある奴らばかりが集まっているのさ)
(だから会わせる気はないって言っているじゃん)
と、そのとき。
(はっ?よせバカ言っているんじゃね)
(勝手な事をするんじゃ…)
(覗き見してたってわけ、はぁ…)
(ったくなんなんだ?そんなに俺があいつを囲っているのがあり得ないシュツエーションか、そりゃ確かに1年前までは…)
(ってな感じだったけどさ)
(本気の恋ねぇ、ふっ)
普通、恋愛っていうのは告白→結ばれて→同棲って流れで行くのが定番だが俺の場合は全く順序が違っていて強引にやってしまってから同棲→告白と来ている。
(ってことは身体の関係を持ったからといって安心できないってわけで、やり方がとんでもなく間違っているんだから当たり前なんだが)
「トントン、ガチャ」
ドアを開けると北山はボーッとしながらベットの上で座っていた。
(ほら…な)
でも、ちゃんと俺は告ったつもりでいたから。
その上でエッチしたことだし一応、自分の気持ちは伝わっていると思っていたんだ、まさか聞き流していただなんて思いもせず。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。