第4話

天使の微笑み④北山side
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2020/02/15 03:33
藤ヶ谷
くっそ、解熱剤どこだ解熱剤!
北山
‥‥‥
藤ヶ谷
なんでないんだよ出て来い、こらぁ~


ポイッ、ポン、ドンッ、ポインっと目の前でいろんな物が飛び交う最中「呼んでも返事はしないと思うけどな」心の中で呟く俺。

藤ヶ谷
ねぇ、ねぇねぇ、ここにも
北山
あの…大丈夫だから‥少し休めば
このくらいの熱…いつもの事だし
藤ヶ谷
そうはいかないったく普段あまり自分が熱なんて出した事ないもんだから


(ポイッ、ポン!)

藤ヶ谷
どこに置いたんだか、ちぃ~とも
分からない

ヒューン、ストン!

(あっ、クマのぬいぐるみ何でこんなもん持っているんだろう?)


藤ヶ谷
あった!
北山
えっ
藤ヶ谷
ほら、なっ
北山
ぁ…‥

ニコッと微笑み水が入ったコップと一緒に手渡され、しかし飲もうとした次の瞬間に今度は。


藤ヶ谷
ダメだ、まだ飲むんじゃない
北山
へっ?
藤ヶ谷
ほら空腹時は避けろって
書いてあるだろ


ペラペラと紙を振りながら俺に見せたのは箱に入ってた薬の説明書。

藤ヶ谷
昨日から、なんにも食ってないじゃん今から何か作ってくるから
北山
ちょ


ドタドタドタッ!「行ってしまった、なんか昨日とは全然感じが違う」ふと思い出す、その時の出来事

北山
あっ、んんっ、やだ、やっ、ハァハァハァ


(くっ)

と、そのとき「ガッシャーン!ガチャガチャ」

藤ヶ谷
あちちちっ、ちっ


(うえっ、大丈夫か…)

暫くし扉が開き、目の前に出されたのは雑炊みたいな食べ物。

藤ヶ谷
ほら食え
北山
‥‥‥
藤ヶ谷
どうした?変なもんは入ってないよ
北山
ぁ…‥
藤ヶ谷
初めて作ったから口に合うかは分からないけど食えないほど不味くはないと思うし、ハハッ


(これ俺のため)

藤ヶ谷
やっぱり嫌か?俺が作ったの
なんか食うの


(いや、そんなんじゃない)

藤ヶ谷
だよな当たり前か
北山
そう…じゃなく
藤ヶ谷
んっ?
北山
誰かに、こんなふうにしてもらった
こと今まで1度もなかったから
藤ヶ谷
お前
北山
いつも独りぼっちでさ
藤ヶ谷
そっ、ふっ
北山
熱があったときも独りで寝てたし
藤ヶ谷
家族はいなかったの?
北山
…食う、パクッ

(うまい)


藤ヶ谷
もう薬を飲んでいいよ1回につき
2錠ね、よし


1時間後…

藤ヶ谷
どう?下がった
北山
ありが…と
藤ヶ谷
おっ、俺は別に熱なんかあったら
することができないし
北山
えっ
藤ヶ谷
いや、なんでもない


「こいつ本当はいい人なんじゃないの?」そう思ったら、なんだかホッとする「トルルル」が、そのとき電話が鳴って。

藤ヶ谷
もしもし、なっ!?淳平、てめぇ~
北山
‥‥っ
藤ヶ谷
今更なんの用?はっ、何を言っている
北山
淳平、淳平なのか頼む代わってくれ


グイッと、その受話器を奪い取り。

藤ヶ谷
やめろ、おい
北山
淳平、今どこにいる
淳平
奴らに捕まったまま助けて宏光
藤ヶ谷
聞く耳もつんじゃない
北山
どうすればいい?
淳平
かっ…カジノの連中に売られてしまい‥臓器移植の
北山
なんだって!?


闇のルートで解体され提供する為に、自分は殺されてしまう。

藤ヶ谷
信じたらダメだ!
北山
けど…よ
藤ヶ谷
お前ならどうする?自分の従兄弟を
危ないと分かっていながら呼び出し
たりなんかしないだろ
北山
でも、それじゃあ淳平が死んでしまう
藤ヶ谷
こんな事までされて、まだ信じているっていうの?あいつのことを
北山
くっ


(分かっている分かっているさ俺だって淳平の言っていることが変だって事くらい)

藤ヶ谷
これ以上は自分が苦しむだけだ
北山
くっ、気づいていた本当は
おかしいって
藤ヶ谷
北山
北山
何度も何回も思ったけど疑ってしまったら信じることが出来なくなったら


(俺は本当に独りぼっちになってしまう)

藤ヶ谷
信じていたかったってわけか、ふっ
北山
あいつだけなんだ身内と呼べるやつは他にはもういない
藤ヶ谷
お前、孤児?
北山
幼いとき両親が事故で死んで
淳平の親も一緒に


(それからずっと2人して生きて来た、でも彼奴は)

藤ヶ谷
施設を出てから曲がった道へ入ってしまったってわけだ、お前を独りにし
北山
時々は会ってくれていたから
藤ヶ谷
自分の都合のいいときだけだろ?
北山
それでも
藤ヶ谷
失うのが怖かった?
北山
コクン


と、いきなり肩を引き寄せられギュッと腕の中へと抱きしめられる。

藤ヶ谷
分かった、だが約束しろ俺から絶対に離れないと何とかしてやるから
北山
本当に?
藤ヶ谷
あぁ、ニコッ
北山
ありがと、ふっ


この時から…

河合
太輔、資料を持って来たぜ
藤ヶ谷
悪い郁人、急に頼んだりして
河合
いいってことよ、それより気をつけて行きな相手は闇稼業の中でもイチにを争う連中だ
藤ヶ谷
分かっている


俺の中にある藤ヶ谷への恐怖心が消え。

河合
渉には連絡しておいた
藤ヶ谷
あいつ、怒っていなかった?
河合
そりゃ、ちょうどニカと最中だった
みたいだからよ少し
藤ヶ谷
大きな借りになりそうだ、ふっ
五関
車、来たぞ
藤ヶ谷
五関!?お前も来てくれていたのか
五関
ちゃっちゃと片づけて戻って来い
藤ヶ谷
あぁ、ふっ


「バタン、ブロロロ~」

そして、その周りにいる仲間たちと接して行くうち藤ヶ谷に対し自分でも思ってもみなかった感情を抱くようになる。

それが愛だとは気づかず、俺はいつの間にか抱かれることさえ苦には感じなくなっていったんだ。

その優しさの中で…




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