不器用な男が雨の日に天使と出会い恋に堕ちた皮肉な運命の中で、果たしてその恋の行方は…
以前に掲載していたノンリアル小説のリメイク版です。
出演/エビキス
Main:藤北
※
ただし年齢設定は実際と違い北山さんが藤ヶ谷さんより年下になっていますので予め御了承ください。
・藤ヶ谷side
その出逢いは忘れもしない、1年前の雨の日。
サザァーザァーサザァ…
「タッタッタッタッタ」足音が、遠退いて行く。
肩から滴り落ちる血、俺は暴力団同士の抗争に巻き込まれ怪我をし路地裏へと逃げ込んでいた。
が、そのとき薄暗い中、目の前に見えたボンヤリとした人影。
(えっ、誰?)
最初はよく顔が見えなかったが徐々に近づいて来るにつれ少しずつハッキリとしていき。
(なーんだ、まだガキじゃん)
ところが、こいつ。
名前は、北山宏光
自分のポケットから、ハンカチを取り出し。
差し出された手…
ニコッと微笑んだ瞳・その唇…
荒んだ気持ちがどれだけ救われたかしれない俺には天使のように見えた、あれからずっと思い続けている。
そして今、ここは某繁華街にある「とあるカジノ」裏稼業では有名な場所だ。
その手の金持ち連中が目の色を変え通い詰めているという、お目当ては…
競売に賭けられる美少年や青年たちってわけ、それも殆どがノンケとくれば好き者の親父たちにとってはたまったもんじゃなく。
また、そいつらの欲をそそるかのように。
売られる者は素っ裸にされ首輪で繋ぎ、ステージ上で晒される。
酷い話しだ…
元々、俺はこういったのは趣味じゃないんだが。
ある情報筋から、思いも掛けない話を聞き駆けつけて来た。
それは今、賭けられている彼奴。
あいつこそ雨の日に出逢った、だから絶対に誰にも渡すわけにはいかないと。
(ふっ、そろそろかな)
(今だ!)
持っていたアタッシュケースを開け札をバラまき。
小刻みに震えている身体へ上着を掛け抱き上げると
「仕方がない、ふっ」そのまま車で自宅へと向かい。
こいつは河合郁人、俺に情報をくれた男。
言っとくが俺にそういった趣味はない普通に女だって抱くし、だがこいつだけは特別な存在だった闇の中に生きる自分にとって唯一の光りの如く。
その笑顔さえあれば、どんな苦難な道のりさえ乗り越えて行けると思えるほどの。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!