この日、仕事から帰って来た藤ヶ谷は一目見て分かるほど機嫌が悪く全身からピリピリ感を漂わせていた。
いつもなら、玄関へ迎えに出ると笑みを浮かべ頭を撫でてくれるのに今日は黙って何も言わず俺の横を通り過ぎるとサッさと部屋の中へ入ってしまい。
(えっ?俺、どうしたらいいわけ)
仕方なく自分も部屋へ戻って困惑していたら暫くし
ガチャ、風呂上がりなのかガウンだけを羽織ったまま俺のところへ来て。
(なんかあったのかな?)
バタン!
「でも、する気なんだ」その言葉が、そうである事を示していた「今夜の藤ヶ谷はなんだか恐い」ふと嫌な予感が脳裏を過ぎる、そして…それは的中してしまう事となる。
風呂上がり脱衣所で俺は鏡の前に立ち、そこに映っている全裸の自分を見てここへ初めて連れて来られた日のことを思い出していた。
(数週間前までは思ってもみなかったっけ、いくら
借金のためとは言え自分が男に抱かれる事になる
だなんて)
(くっ…)
言われた通り素肌に白いYシャツ1枚だけを羽織った俺は、思わず洗面台へ両手をつき俯いてしまう。
(だって…よ‥借金を完済するまで、お前は俺のもんと言われているようなもんじゃん)
ギュッと震えだした身体を自分の両手で包み込み。
(それだけの関係なんて、あまりにも虚しすぎる…クッ)
周りの連中の話を聞けば聞くほど自分が惨めに思えてならず。
そのときだった。
ハッと前を向けば、大きな鏡に映し出された険しい表情の藤ヶ谷。
とたん両腕を掴まれたかと思ったら。
洗面台へ身体ごと押しつけられてしまい。
挙げ句そう言った瞬間から俺の胸を後ろから、まさぐり始め。
(ここでするのは嫌なんだ)
そのまま手が尻へと触れたのを感じると同時に前をも扱かれ途端に。
俺は今までにない女みたいな声を出してしまい。
思わず手で口を抑えたら、後ろから藤ヶ谷が覗き込むようにして耳元で囁く。
グイッと、今度は俯いていた顎を持ち上げられると「ハッ」目の前の鏡に映った自分の姿を見た瞬間に身体が小刻みに震え。
こいつの舌が尻の穴を舐め、ほじくり手は前を扱き続け。
視界には、それに悶えている自分がいて「おかしくなっちまう、クッ」
が、そのとき。
ギュッと、その手が俺のを握り締め寸止めされ振り向くと床にドカッと座り込んでる藤ヶ谷の姿が見え
「今日は絶対に言わせてやる」
藤ヶ谷の眼が、そう言っているのが分かった。
俺は、もう逆らえないと悟り俯き加減に身体を震わせ傍へ近づくと、その首へ腕を回し抱きつき耳元で言葉を発した。
(終わりだ、もう何もかも)
ギュッっと抱きしめられ、自分が自分でなくなって行く。
ズブブブッ、挿入された藤ヶ谷のシンボル。
壊れた先には、いったい何が待っているのか。
(なぁ?教えてくれよ、こんな事を続けてなんの意味があるっていうんだ俺達に、クッ)
その腕に抱かれながら涙が止めどもなく流れ落ちる苦しいまでに胸を締めつけ、押し寄せてくる快感と共に崩れてくのを感じながら俺は堕ちて行く自分を自覚していた逃れることが出来ない、その中へと。
(あぁ、どうしたらいい半端なく気持ちがいいんだ)
ヌプッ、ヌチャ!
座ったままの藤ヶ谷の膝の上で俺は、後ろから抱え込まれるように挿入され持ち上げられた両足はしっかりその手で掴まれてしまっていてさ。
物凄い勢いで下から突き上げられていた、ズンズンズン!
グチュ、グチュン、そして頭の中はもうぐちゃくちゃで何も考えられなくなってしまっていて。
(あぁ…見える‥見えている…)
(まるで女みたいに乱れている自分が、くっ)
とたん更に押し寄せる快感「でも怖い、やっぱ、
んなのは嫌だ」
(狂う、もっ…狂っちまうよ)
(んなバカな…でも‥)
確かに動いている、気がつけば藤ヶ谷は足から手を離し俺の身体を動かすのをやめていてその手は胸を愛撫し。
(そっ…そんな‥嘘だろ!?俺は自分から快感を貪っているっていうの)
思った瞬間に、ビクンと身体が跳ね上がり頭の中が真っ白になったかと思うと。
自分のそこから白い液体が扱いてもいないのに次から次へ溢れ出し。
(止まらない誰か止めてくれ~やだ、やっ、凄く気持ち、いっ、堪ら…ね…)
(えっ、なんだよそれ?分からないって)
このとき、ニヤッと笑った藤ヶ谷の顔を俺は忘れはしない何故だか嬉しそうに見え。それからは、もう自分でも何を言っているのか分からないほど叫びまくっていた。
数分後、藤ヶ谷は俺を抱き上げ部屋へと連れて行きベットの上へ寝かせると。
お約束の如く50万円の札をバラまいて俺は、ただ虚ろな瞳でその光景を見つめていたんだ。
そう言って抱きしめながら。
が、その言葉を聞いた瞬間に俺の中で何かが爆発し
側で散らばってるお札を手で掴み投げつけてしまい
認めたくないと心が叫ぶ。
(嫌なんだ頼むから、これ以上俺を壊さないでくれ)
しかし…
このとき藤ヶ谷が苦渋の表情をしていたことに俺は気づかなかった。
(今から?)
そう言われるまで下を向いててその顔を見ていなかったから、そして数分後部屋に戻って来たこいつは
向かった先は某高級ホテル、でもそこで待っていたのは思いもかけない奴だった。それは混乱し自分を見失いそうになっている俺を藤ヶ谷が、なんとかしようとした苦肉の策であったことを後になって知る
けど逆に事が起きてしまうキッカケともなり、そこで初めて俺は気づく事になる自分の中にあった彼奴への想いをピンチに見舞われて。
・藤ヶ谷side
(泣かせてしまった俺はやり方が間違っていたのか?どんな形であれ一緒に暮らし肌を重ね合わせていれば北山も、そのうちに馴染んでくれるものと思っていたのに)
が、あそこまで感じていながらもそれでもなお認めず拒み続ける姿に心が痛む護りたかった笑顔でさえ自分の手で消してしまっている気がし。
トルルル~
俺は、あることを決心し郁人に電話をした。
(塚ちゃんのことで苛ついていた、そんなこと言い訳にもならない。だが、あいつが何かに巻き込まれているとしたら間違いなく原因は俺)
そう思うと…
「追い詰めるつもりなんてなかったんだ」ただ沸き上がって来るどうしようもない感情に押しつぶされそうになり、ぶつけてしまった。
(情けねぇ話し)
金で買って縛りつけている奴に救いを求めてしまった自分が「受け入れてもらえたら、その笑顔で癒してくれたなら俺は気持ちを切り替え頑張ることができる」そんな甘え今のあいつに持っちゃいけなかったのに。
(何を期待していたんだよ俺は、バッカじゃねマジで呆れてしまう)
(俺とだってヤるのが嫌で堪らないんだ、ましてや
見ず知らずの男となんか出来るわけがない)
1つは…
そうしたのは俺だけど。
(まず望みは薄いだろ)
(戻してやりたいんだ俺が奪ってしまった天使のような笑顔を)
(お前が言うと、そうは聞こえないんだよ)
俺の傍にいたくないって言うのなら仕方がない最大の目的はそれだった彼奴の本心を知りたくて
(まっ、もとは無理強いしてここに居させているんだから答えは分かっていたんだけどな)
だから俺に出来る最後の小芝居だったんだ、あいつへの自分がしてしまった事への償いとして。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。