第189話

愛と嘘の結末… 44
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2023/04/09 14:00







バンッ……!!

部屋の中に打撃音と物がカタカタと揺れる音が広がる。
柄にもなく机に叩きつけた拳には、鈍い痛みが走った。

机の揺れと共に、カタッと写真立てが倒れる。
その中には、幸せそうに笑う彼女の姿が写っていた。

平穏な日々だった。幸せだと心からそう思えていた。
あなたをこれから先も、幸せにしていきたいと…

だが、そんな思いはもう…叶いそうもなかった。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
……
部屋の外からは、日々誰かの笑い声や悲鳴が聞こえる。

そして、僕の頭の中では、あの日に見た…この写真からはとても想像出来ない彼女の悲痛な表情と叫び声が、一時も離れる事無く、繰り返され続けていた。


僕は結局、彼女を守る事なんて出来なかった。


あの時、ベラトリックスに磔の呪文をかけられた後の彼女は、僕の腕の中で僅かに震え、息は途絶えてしまうのではないかと不安になる程に細くなっていた。

ベラトリックスへの怒りと同時に、自分自身への怒りと憎しみの感情が生まれ、我を忘れかけた僕は躊躇いもなく杖を抜こうとしていた。

ダンブルドアを殺せなかった僕が…
"ベラトリックスを殺せば"なんて考えてしまったのだ。

だか、杖を抜こうとした僕の手を引き止めたのは
僕の腕の中で、か細い声を出すあなただった。

死にたいと思う程の苦痛を感じていたであろうあの状況下でも、あなたは冷静に判断をし僕を止めてくれた。

僕は、彼女を守ろうとしておきながら
結局、あの場でもあなたに守られてしまったのだ。


情けなかった。何も出来ない自分が……
愛する彼女を傷つけ、苦しめてばかりいる自分が……


あなたは今頃、僕がダンブルドアを殺したと思っているのだろうか…それとも、彼女は真実を全て知っているのだろうか、、、。

どっちにしろ、死喰い人の側に落ち…
あなたの大切な場所である、ホグワーツを破壊する手引きをした僕になど、彼女はもう会いたくないだろう。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…………
僕は、しばらくの間写真を見つめた後
わざと写真を伏せるように、写真立てを倒して置いた。
ベラトリックス・レストレンジ
ベラトリックス・レストレンジ
そいつを地下牢に連れていきな
それと同時に、部屋の外からベラトリックスの冷淡ながらにいつになく楽しげな声が聞こえ、僕は何となく部屋の外へと出た。

階段近くから、声が聞こえた方へ顔を少し覗かせる。
すると、そこに見えたのは…死喰い人に連れていかれる見覚えのあるホグワーツの生徒だった。


確かあれは、レイブンクローの…ラブグッドか?


直接的に会話を交わしたのはゼロに等しいが、あなたとよく話していたその姿には見覚えがあった。ラブグッドは、特に抵抗する素振りも見せず、死喰い人に連れられるまま歩いていた。

何故、ラブグッドがここに?
そんな事を思いながら、何も出来ずにその光景を眺めていると、一瞬だがラブグッドと目が合った。

すると、ラブグッドは僕を睨みつける訳でもなく…
何故か、少しだけ口元を緩ませ微笑んだ。


なんなんだ?一体…
僕は階段の影に身を隠しつつも、思わず眉を顰めた。

ベラトリックス・レストレンジ
ベラトリックス・レストレンジ
おや、どうしたんだい?ドラコ
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
ッ…いえ、なんでもありません
階段の影に体を隠していたつもりだったが、僕を見つけたベラトリックスはニヤリと楽しげに微笑んだ。

ベラトリックスと目が合った途端に息がつまり、僕はその場から逃げるように再び自室へと戻った。

ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
はぁ……なんで、ラブグッドが…?
閉めた扉にもたれ掛かりながら、ボソッとそんな事を呟く

地下牢には既に、オリバンダーやゴブリンがいたはずだ
まだ、その2人は分かるが、何故ラブグッドなんだ?


でも、もし話す事が出来れば……


ラブグッドが連れてこられた真意は分からないが、僕はこの瞬間…連れ去られてきたラブグッドの心配ではなく、もしかしたらラブグッドなら…あなたが今何処で過ごしているか知っているかもしれない。とそんな事を考えていた。


あなたは、きっと僕には会いたくない。
そんな事をわかっていながらも、彼女の居場所を知る由もない僕は、彼女の事が心配でたまらなかった。



出来ることなら、あなたの事を知りたい。
だが、地下牢には入るな。と母上からキツく忠告を受けている僕は、見張りもいる手間簡単には入れそうになかった。

それに、ホグワーツの校長になる前スネイプには…
「慎重に動く事だドラコ。何のためか…お前には分かるだろう?」とそう言われた。

あなたの事を知りたいからと、軽率に動く訳には行かない。そう思っていた矢先……








あなたの情報を得る機会が…以外にも早く訪れた。





















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