ネビルがアバーフォースの元に向かってから少しした頃
皆が、徐々に必要の部屋に集まり始めていた。
パーバティが少し心配そうに首を傾げていると、丁度ホッグズ・ヘッドへと繋がっている絵画の扉がゆっくりと開き、ネビルがそこから顔を出した。
シェーマスが変わらぬ口調で不満をもらす。
するとネビルは、少し呆れた様子を見せながらも眉を上げ、期待をさせるような含みのある笑顔を見せた。
それと同時に、ネビルの後ろからは 今まで皆が帰りを待ち望んでいた、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が姿を現した。
シェーマスのその声と共に、皆が一斉に立ち上がり、必要の部屋のあちこちから「ハリー!」という歓喜の声と鳴り止まぬ拍手が聞こえ始めた。
だけど私は、驚きのあまり声も出ず、皆がハリー達に駆け寄っていく中で、ただその場に立ち尽くしていた。
そんな時、ハーマイオニーが私に勢いよく抱き着いた。久しぶりに感じる彼女の安心出来る温もりに、3人が本当に帰ってきた事を実感する。
溢れ出た感情を表すように、私も精一杯に彼女の事を抱きしめた。そして、ハーマイオニーは名残惜しそうに私から離れると、私の肩を掴んで優しく微笑んだ。
そして、周りの事も気遣いながら彼女は私の瞳を真っ直ぐ見つめ、小さな声で私にある事を伝えた。
ルーナから"マルフォイの館"で起きた話を断片的に聞いていた手前、私は彼女に申し訳なさを感じていた。
しかし、私の気持ちとは裏腹に、私が何を言おうとしているのか分かった様子のハーマイオニーは、微笑みながら小さく首を振った。
辛かった筈なのに、私に向かって平気そうに笑うハーマイオニーに対し、目頭が微かに熱くなる。
すると、瞳を揺らしている私にハーマイオニーは心配そうな視線を向けながら、カロー兄妹の体罰によって付けられた私の頬の傷に手を当てた。
治りかけの傷を撫でられながら、私は笑みを零した。
平気そうな私を見て安心したのか、ハーマイオニーは「なら大丈夫ね」と私につられるようにして笑った。
それと同時に、ハーマイオニーの肩越しに私の事をじっと見つめてくるハリーと目が合った。
私とハリーは、少しばかり ぎこちなく名前を呼び合うと 互いに引き寄せられるかのように抱き合った。
そして、短いハグを済ませると私は、ハリーのすぐ後ろに立っていたロンにも続けざまに抱きついた。
3人に微笑んでから、いつの間にか隣に立っていたネビルに視線を向けると、ネビルは私の意思を汲み取ってくれたのか、ニコリと笑いラジオの方を顎でしゃくった。
ネビルの視線を追うように、そちらの方へ顔を向ければ
ナイジェルが、既にラジオを通して騎士団へ情報を流してくれていた。
ナイジェルの声が必要の部屋に響いている中、みんなの視線の先は、真剣な表情をしているハリーに向いてた。
ハリー達が、以前言っていた"分霊箱"。
3人がここに戻って来た理由はそれではないかと思った私は、ハリーに視線を向けながらそう聞いた。
すると、私の予想が当たっていたらしく、ハリーは私の目を真っ直ぐと見つめながら何度か小さく頷いた。
そして、今度は視線を動かし皆を見渡し始めた。
断片的なハリーの説明に対し、ネビルが眉を寄せる。
殆ど即答されるハリーからの答えに対し、全員が困惑の表情を示し始める。私も、想像してた以上に少ない情報に思わず顔を顰めた。
今度は、曖昧でありながらもハリーが分霊箱の存在を確実に知っているような、そんな口ぶりだった。
"レイブンクローに関係のある、小さなもの"
その情報に、数名の生徒は首を傾げ、相変わらず困惑の表情を浮かべていた。私も1つ心当たりはあったが、あまりに現実味が無く口を噤んだままでいた。
だが、そんな中ルーナが唐突に口を開いた。
ルーナのその言葉に、殆どの生徒はロンと同じく呆れて困惑したような表情を浮かべていた。
ルーナとチョウの会話を聞き『訳が分からない』とでも言う様に、先程よりも更に顔を顰めたロンが口を開く。
そんなロンに一瞬呆れた視線を向けたが、ロンが知らないのも無理は無いと思った私は、簡潔に説明をした。
そう説明し終えると共に、必要の部屋の扉が開く音がその場に響いた。大方、誰が入ってきたのか予想がついた私は、扉の方ではなく 直ぐにハリーの方に目を向けた。
部屋に入ってきたジニーは、ハリーの事を視界に入れると嬉しそうにハリーの名前を呼び、他の生徒なんて見えていないかの様だった。そしてそれは「やぁ…」と返事を返しているハリーも同じだった。
ロンとシェーマスが何やら言い争いをしている中、私はハリーとジニーを見ながら、微かに笑みを浮かべた。
『束の間の幸せ』今の2人を見ていると、そんな言葉が私の脳内に浮かんだ。"羨ましい"なんて、そんな感情を抱くのは良くないが、互いに見つめ合っている2人を見ていたら、私の心臓が少しだけ苦しくなった。
感傷に浸りかけていた私は、ネビルの声によって我に返った。全員の視線が、ジニーへと集まる。
ジニーのその言葉で、少しばかり焦りの表情を浮かべた皆の視線が、今度はハリーに集まる。
そんな中、私は1人冷静に地面に視線を下ろしていた。
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漸く、ホグワーツにハリー達が戻ってきました🍀*゜
この小説も終盤に差し掛かっている所ですが、活動報告でも投稿させて頂いた通り、現在作者はスランプ気味です。そのため、更新頻度の著しい遅れや、1話分の文量が減る可能性がございます。ご了承ください🙇♀️
また、『愛と嘘の結末…』ですが、終盤に向かうにつれ 【if要素】が増える"予定"です。どんな世界線でも許せる方のみ、これからも作品を読み続けてくださると幸いです🕊
皆様、今後とも応援の程よろしくお願い致します🌙*゚
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。