保護呪文を掛け、戦闘態勢が整い始めてから間もなく…
"1時間"というタイムリミットが経過し、死喰い人達からの総攻撃が始まった。
辛うじて、教授達や騎士団と共に掛けた強固な保護呪文が攻撃を防いでくれてはいるが、恐らく保護呪文で城を守れるのも、時間の問題だろう。
城内を逃げ惑う生徒達を誘導していた私は、死喰い人達に攻撃され始めた事に気がつくと、ネビル達に危険性を知らせる為、城を離れ 直ぐに橋の方へと急いだ。
橋に向かう途中、城内から見えた燃え盛る競技場に
戦いが刻一刻と迫っている事を実感させられる。
そんな会話を交わしている途中、ふと空を見上げると
今まで攻撃を守っていた筈の保護呪文が、地鳴りのような僅かな音を立てながら、徐々に崩壊し始めていた。
私の精一杯の大声が、不気味なほど静かな橋に広がり消えていく。そして、ネビルからの返事が聞こえるよりも先に、多くの野太い叫び声と足音、破裂音がその場に響き渡った。
そして次の瞬間、こちらに逃げてきていたネビルが橋に火をつけ、大きな爆発音と共に橋が崩壊し始めた。
その崩壊に巻き込まれるように、人攫いやネビルも崩れる橋と共に姿を消した。
緊迫した空気の中で、ジニーの声が響く。
その声が空間から消えかけた頃、ネビルが少しばかり踏ん張る声を上げ、崩れた橋から身を乗り出した。
私は、ネビルが無事な事に胸を撫で下ろし、シェーマス達に手伝って貰いながら、ネビルを橋から引き上げた。
ネビルの事を引き上げ終えたシェーマスがそう言い、空と城の方に視線を動かしながら、眉を顰める。
焦りと恐怖が混在する雰囲気の中、ネビルがその場の空気を変えるように、全員にニコリと笑う。
そこまで言いかけた瞬間、どこかからか爆発音が聞こえ
その振動と大きな音が橋の近くまで響いた。
不安に思った私達は、全員で顔を見合せ、直ぐに城内の方へ足を進めた。城内は、叫び逃げる生徒達で溢れ返り、少数ではあるが死喰い人達も既に侵入していた。
私がそう言うと、ネビル達は言葉を交わさずとも静かに数回頷き、バラバラにその場を離れた。
多くの生徒が城内を逃げ回る中、もう一度杖を強く握り直し、冷静さを取り戻すように深呼吸をする。
間もなくして、城内に侵入してくる死喰い人達の数が増えだし、辺り一体で破裂音や呪文がぶつかり合う火花のような音が聞こえ始めた。
ほんの数年前、入学した頃に目を輝かせながら眺めていた城内は、ものの数分で瓦礫だらけになっていた。
至る所で爆発が起き、負傷者も嫌という程視界に入る。だけど、諦めずに私は皆と共に戦い続けた。
体力の消耗を少しずつ感じ始めた頃には、最早どれ程の時間が経ったのかすら分からなくなっていた。
倒しても倒しても、永遠と湧き出てくる死喰い人達を相手に、必死の応戦を続ける。
このままじゃ、ドラコと会うどころか…自分がやられてしまう可能性の方が高いのではと考えてしまうくらい、戦いは段々と難化していた。
迫り寄ってくる死喰い人に呪文を唱え、動きを封じる。
しかし、それと同時に背後にも気配を感じ、私は瞬時に振り返った。だが、その時にはもう遅く既に私へと杖が向けられていた。
私が、杖を向けるのが早いか…相手が、呪文を放つのが早いか…間違いなく、可能性があるのは後者だろう。
杖を向けようと腕を動かすも
何となくその瞬間に、自分自身の"死"を悟る。
彼と会わずに終わってしまうなんて
『今も、愛してる』という事も伝えられずに…
果たして欲しかった、約束すら叶えられずに…
自分の死を目の前にしても尚、私の心は殺される恐怖心よりも、彼と会えないという後悔に支配されていた。
半ば覚悟を決め、相手の唱える呪文がスローモーションのように見え始めかけたその瞬間
ずっと聞きたいと願っていた"彼"の声が聞こえた。
そしてそれと同時に、目の前の死喰い人は、力が抜けたように倒れてそのまま階段を転げ落ちていった。
私の幻聴じゃなきゃ、あの声は"彼"のはず…
そう思った私は、直ぐに呪文が飛んできた方に視線を向けたが…そこには、誰の姿もなかった。
だが、その場から走り去っていく"プラチナブロンド"の後ろ姿だけは、しっかりと見る事が出来た。
間違いない。あの後ろ姿はドラコだ…。
どんな理由があるかは知らないが、彼がホグワーツに戻ってきているという事実がわかったと同時に、戦いの場には似つかわしくない程、私の心臓が煩く鳴り始める。
漸く、彼に会って話が出来る…
そう思い、彼を追いかけようとした瞬間、私の目の前をバチッ…! と音を立てて鋭い光の線が通った。
私は、邪魔をされた怒りを感じながら、すぐさまその場から身を引き、攻撃が飛んできた方へと杖を向けた。
寄って来ていた死喰い人を倒したと同時に、ハーマイオニーが私に抱きつくようにして階段を駆け下りてきた。それに続くように、ロンとハリーも降りてくる。
私がそう聞くと、ハリーは静かに頷いた。
ハリーは、私の瞳を真っ直ぐ見つめながらそう言った。
もちろん、ハリーにもハーマイオニーにだって、スネイプ先生の事は話していない。にも関わらず、ハリーは何か勘づいているように、確信を持った言い方をした。
ハリーの言葉に私が押し黙っていると、寄ってきた死喰い人を倒したロンが、焦りに顔を歪ませながらこちらを向き、そう告げた。
ロンの言う通り、この空間で悩む時間などない。
本当なら、ドラコの事をすぐにでも追いかけたかったが…戦いの間に見つける事は難しく、お互いに危険だ。
それなら今は…そう思った私は、ハリーからの誘いに「わかった、私も行くわ」と深く頷いた。
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チラリと見えたプラチナブロンドの彼は…
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。