第7話

7.過去とトラウマ/
280
2018/04/01 17:58




蒼斗に付いていくと、
少し足場の悪い所についた。

でも、海の水に触れられる。

そう思って海の水に触れようとした。



「…ダメっ!」



その瞬間、蒼斗が急に大声で私を止めた。

蒼斗の大声に聞いたことないから、
びっくりしてしまう。



「あっ…ごめん…っ!ここ、足場悪いから…っ、足が滑ったら大変だと思って…っ」

「そっか、大丈夫」



蒼斗は1回深呼吸すると、
真剣な表情で私を見てきた。


…やっぱり、
朝から蒼斗の様子はおかしいと思っていた。

悲しい表情を見せたり、
笑顔に違和感があったり…。

この場所は、蒼斗にとってどんな場所なのだろうか。



数秒間沈黙が続いたが、
その沈黙を破ったのは蒼斗だった。



「…俺、さっ。ここで大事な子…事故させちゃったんだ…」



震える声で蒼斗が話し出す。
……大事な子。
恐らく写真の女の子のことだろう。



「…ここでその子は滑って、海に落ちた。俺はすぐにその子を助けようとしたけど…、その子は、この岩に頭を打っちゃったんだ」


岩をガンッと蹴り飛ばす蒼斗。
蒼斗の表情は今まで見たことないほど暗かった。


「生徒手帳に入ってた写真は……」


思わず口に出して呟いてしまうと、
蒼斗は一瞬びっくりした顔をした。

そして、また俯いた。


「やっぱり、見たんだ…っ」

「…ごめんなさい」

「ううん…、これ…」


蒼斗は自分の生徒手帳を開き、
あの写真を私に見せてきた。

そこに写っていた女の子は_____










__________私だった。



「…わ、たし…」

「…俺が守れなかったせいで、あなたは記憶を失ったも同然。…記憶を失くしたあなたに会うのが怖くて、つい、はじめましてのフリとかしちゃってさ…」

「こんな近くに海があるのに、この間のお出かけの時、海を見なかったよね…、それ、俺がわざと海を見ないように避けたんだ…」




自分を責めるように蒼斗はどんどん話し始めた。

…じゃあ、蒼斗と私は記憶を失う前から知り合いだったんだ。

それを知りながら、蒼斗は、
記憶を失った私と関わってくれていた。



「…蒼斗と私の…記憶を失う前の関係って…」

「恋人だったよ…っ」



……やっぱり。



「…大事な彼女を守れない俺がもう一度「俺と付き合って」なんて、馬鹿げたこと言ってるのは分かってた…。……だから」























「さよならしよう、あなた」















プリ小説オーディオドラマ