第4話

4.お出かけ/③
305
2018/03/27 14:25


その後、蒼斗は私をお洒落な喫茶店に連れて行ってくれた。



その時、蒼斗と話して分かったことがある。


蒼斗は私と偶然同じ学校だったということ。
私の一番仲良い友達と知り合いということ。
蒼斗は病院の近くに住んでいること。

……些細なことだけど蒼斗のことをいっぱい知れた。
それが、何故か私にとっては嬉しかった。



その後は、色んな小さなお店を周り、
雑貨やアクセサリー。
色んなものを見に行った。



時が過ぎるのはあっという間で、
そんなことをしていたら、すぐ1日が終わってしまった。

蒼斗は私を病院まで送り届けると、
『また来るからっ』と言って帰っていってしまった。







…なんだかんだ言ってすごい楽しんでしまった。

ここ数日間、
ただ病室で外を眺め、いつ記憶が戻るのかと自分を責める日々が続いていた。

だけど、今日は違った。
記憶が戻る心配も忘れ、夢中になって楽しめた。



「蒼斗はなんで…私なんかに…」



1人になった病室でポツリと呟く。

その時、自分のベッドに目を移すと、
何かが紛れ込んでいた。


「……生徒手帳」


恐らく、蒼斗のだろう。

名前を確認するために、
生徒手帳を開くと何かが落ちてきた。


……写真。
落ちて裏返しになった写真をめくる。


写っていたのは、女の子と蒼斗だった。


何故か見ちゃいけないものを見た気がして、
すぐに写真を見るのをやめた。
その為、女の子がどんな子だかはわからなかった。




……蒼斗の彼女なのだろうか。

それだとしたら、
何故蒼斗は私に「俺と付き合って」なんて言ったのか。


それとも姉とか妹とか友達なのか。



もう一度写真を見て、
確かめればいいだけなのに、
私にはそれをする勇気がなかった。



そっと写真を生徒手帳に戻し、
次、蒼斗にあった時に渡すために机の上に置いておき、再びベッドに横になる。

そして、複雑な気持ちを押し殺して、
その日は目を閉じた。

プリ小説オーディオドラマ