高校生の春…入学式。
新たなる一歩を踏み出すんだ。
そう決めていたから、学校へ向かう足が軽い
私が歩く後ろから声が聞こえた
振り返ればおばあちゃんが
お弁当を持って小走りしてるではないかっ!
おばあちゃんを疲れさせちゃった…、
私のせいだ。
お弁当忘れなきゃ…
おばあちゃんは走らなくて済んだのに
おばあちゃんは私の背中を撫でてくれた
おばあちゃんに手を振って前へ進んだ
私の家はおばあちゃんと二人暮しで。
両親は離婚して おばあちゃんに引き取られて
おじいちゃんは亡くなった
広い体育館の中… 風が吹けば桜の花びらが
体育館の中に入ってくる
眼鏡をかけて三つ編みをしておさげにする。
前髪は長めで黒髪。これが私。
長い校長先生の話を済ませ、クラスへと戻る
席は…廊下側の後ろから2番目。
席に座ってみれば私の後ろは中学生の頃からいじめてきた女子だった
ダメだ、目を合わせちゃ。
この女子はもう仲間なんて作っちゃって、また私をいじめるのかな
ただ自分の机を見つめて、聞こえない、聞こえない、何も聞こえないんだって唱える。
私がおばあちゃんと二人暮しだから、
もちろんお家はおばあちゃんの匂いがする
私は落ち着いていい匂いだって思うけど、
古臭いって笑いものにされてきた
女子は私の髪を1本抜いた
いつもの事だ。
いつもの事…。。
先生が入ってくると、みんな席に座った
先生は黒板に 「岸 優太」と書き
その隣に 「独身」と書き加えた
早くホームルーム終わんないかな
はぁ…キツい、帰りたい。
先生は慌てだして教卓にあるもの全てを床に落とした
先生が落ちているものを拾っていると、
ある女の子も手伝っていた
学級委員に向いてそうな感じな子。
先生がそう言えば、クラスが騒ぎ出す
またこの時間か…。
後ろの席でひそひそ話をしている女子たち
その女子は私の席の前に立った
顔をあげれば口から出したガムを
私の頬につけてきた
最悪。 洗いに行かないと…。
後ろから私の肩を組んで耳元で
って呟かれ…
私は目をつぶった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。